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もともとの音楽の感動を忠実に再現する――。    BOSEがオーディオに求めるテーマは実にシンプルだ。たとえ狭くてノイズの多い“車の中”という空間でも、「原音を忠実に再生する」というポリシーは変わらない。

マイバッハ、ポルシェ、キャデラック、アルファロメオ、アウディ……。数多くのプレミアムカーに“純正オーディオ”として選ばれている「Bose Sound System」。最近は国産車にも徐々に搭載車種が増えている。これまでの純正オーディオとはあきらかに一線を画すBose Sound Systemの魅力は、アフターパーツの高級カーオーディオをもしのぐ“専用設計ならでは”の極上の音響にある。

「BOSEのオーディオビジネスは、Bose博士の“原音追求”から始まっているのです」――。ボーズ・オートモーティブの丸山秀樹氏は、Bose Sound Systemの魅力についてこう語る。

「BOSEが提案するサウンドディテールは、オーディオメーカーが主張しているものとは異なるケースが多いですね。Bose博士はデータに裏付けられた合理的な検証を重視するとともに、音響心理学的な面からもアプローチを試みました。これまで常識といわれていたオーディオ理論を再度検証し直したのです。“原音を忠実に再生する”というBOSEの思想は、カーオーディオシステムにも生かされています」(丸山氏)

丸山秀樹氏

“音のクレイモデル”を独自に作る

典型的なコンサートホールは9万立方メートル、典型的な乗用車の居住空間は9立方メートル。BOSEは、それぞれ空間の特性に合わせて音響を設計していく。具体的には音のコンセプトモデルをBOSEが独自に作成して、新車開発とほぼ同時進行でオーディオシステムを作り上げていくのだ。

「空間が限られているというだけでなく、エンジン音、ロードノイズ、風切り音……など、音響に関しては車内という空間は最悪の環境といえるでしょう。ですが一方で理想的な環境であるかもしれない。ただし理想的な環境になる条件としては、クルマの設計仕様に精通すること、チューニングを十分にとることが必要となります。これが『サイズに合わせて音響を設計する』ということです。新車のコンセプトモデルを作成して音を作り上げていく過程は、クルマ自体を設計する時の粘土で作るクレイモデルに似てます。われわれは“音のクレイモデル”を事前に作っているのです」(丸山氏)

FUGA(フーガ)

日産のプレミアムカー「FUGA(フーガ)」。フロントシートバックに埋め込まれた国産車初のサラウンド専用スピーカーを含む14スピーカー構成のBOSEサラウンド・サウンドシステムを搭載。車両設計の段階から日産とBOSEが共同で開発を進めた、まさに“FUGAのためだけ”の専用カーオーディオシステムだ。360度すべての方向から自然にバランスよく音に包まれる極上の空間は“音のファーストクラス”と呼ぶにふさわしい。ひとたびその音響を体験したら、もう普通のカーオーディオには戻れないかもしれない。

FUGA(フーガ)車内

贅沢な音響空間、広がるカーエンタテインメントの世界

Bose Sound System搭載車にはプレミアムカーが目立つが、BOSEは決して高級ブランドを目指しているわけではない。ただ、コストや開発期間を考えると、高級車の方がBOSEが目標とする音響を実現しやすいのも事実だ。それでも最近では幅広いユーザー層に人気のあるクルマ……、例えばミニバンなどにもシステムの搭載が進んでいる。その代表例がマツダのMPVだろう。

ミニバンのように3列もシートがあるとすべての席で同じリスニング環境というわけにはいかず、どうしても前席側優位の設定になってしまいがち。標準オーディオの弱点がここにある。だがBOSEの音作りは、すべての席で同じ音を楽しんでもらえることを目指している。


「新MPVではBOSEとして2つのシステム提案を行っています。1つはフロントとリアにモニターを配した11スピーカー構成で音と映像を楽しめる5.1chサラウンド対応『BOSEサラウンド・サウンドシステム』で、もう1つは全席で快適なリスニング環境を構築できる8スピーカー構成の『BOSEステレオ・サウンドシステム』です」(丸山氏)
新MPV
新MPV車内
全席で同じ音響空間を作り出すイコライジングモードに加え、2列目3列目の後席で映画のDVDを存分に楽しめる後席優先のイコライジングモードも搭載。車内が映画館に早変わり。
新MPV車内
マツダのミニバン「MPV」。5.1chディスクリートサラウンドサウンドに対応した「BOSEサラウンド・サウンドシステム」搭載車に乗り込むと、そこには劇場やコンサートホールの感動をそのままクルマで楽しめる贅沢なカーエンタテインメントの世界が広がる。

取材協力

ボーズ・オートモーティブ  http://www.bose.co.jp/auto/

取材・文/+D Style編集部

撮影/永山 昌克