人と人とをつなぐ「グッドデザイン」+D Style News

» 2008年08月25日 17時14分 公開
[小笠原由依,ITmedia]

 1957年にスタートしたグッドデザイン賞は、過去3万件以上の“グッドデザイン”を評価してきた。生活を豊かにするデザインを多くの人に伝え広めることを目的とするこの賞、今年度の審査では“ディマンドサイド”というキーワードの下、近未来の消費者から見てよりよい製品かどうかが問われた。

 8月22〜24日に開催された「グッドデザインエキスポ2008」では、1次審査を通過した約2200点が展示された。今回はノミネート製品の中から“人と人とをつなぐデザイン”を紹介したい。

距離を近づける座卓

photo 「和-table」

 おしゃれな座卓「和-table」は、持続性と、家具作りの技術の継承を目的に作られた製品で、接着剤やネジを一切使わない伝統的な技術“組み手”を使ったものだ。木の組み合わせのみで固定するため、取り外しや部分的な交換ができ、長く使い続けられる。製品の塗装には染めを使用しているので、汚れてしまった場合でも表面を削ればきれいな状態を保つ。

 壊れた部位を補修しながら使い、長く残すことで、古くから伝わる和家具の製作技術を次の世代に伝えることのできるデザインだ。

 また、「あえて座卓の高さを低く設定することにより、座卓を囲む人たちの距離感を近づけることを意図した」とデザイン面から“コミュニケーション”の活性化を図っている。

喫煙者と非喫煙者の距離を縮める、リラクセーションギア

photo デザイン豊かなシガロ

 「シガロ」は、タバコのような見た目をしたリラクセーション製品。パイプ部にアロマフレーバーを入れて吸い、香りを楽しむツールだ。喫煙者は禁煙中の口さみしさを紛らわすアイテムとして、非喫煙者は香りを味わうアイテムとして楽しめる。

 パイプ部分はグラフィックチューブといい、黒や白、黄色などの1色で彩られたシンプルなモデルから、スワロフスキーをあしらった限定モデル、アパレルブランド「mastermind JAPAN」とのコラボレーションモデル(非売品)などがラインアップされる。

 身体に害を与えずに、喫煙者と非喫煙者の垣根を越えて楽しめる“嗜好(しこう)品”を一度試してみてはどうだろうか。

ハンカチ忘れた? 僕のTシャツで拭いたら? 「今治Tシャツ」

photo 今治Tシャツ

 明治27年に生産開始という長い歴史を持つ今治地域のタオルが、いま輸入物の波に押されている。外国産との差別化を図るべく、タオルをいかに面白い製品にするかを考えてつくられた製品が「今治Tシャツ」だ。

 オーガニック100%のタオルをTシャツの胸や腹部、腕などに縫製することで面白みと機能性を追求。おなかであれば冷えを防ぎ、二の腕部分に縫製すれば顔の汗をぬぐえる。

 かわいらしく、個性的なデザインなため着ているとちょっとしたコミュニケーションのきっかけになるだろう。

 同製品をデザインした宮崎タオルは、2007年度のグッドデザイン賞ではタオルとマフラーを組み合わせて作った「今治マフラー」を出品し特別賞を受賞。“タオル×日用品”のコラボレーションで地場産業に新しい風を運んでいる。

視覚の壁を越えた、カードゲーム

photo キキミミ

 「キキミミ」は、大阪電気通信大学の医療福祉工学科で開発された聴覚を使って遊ぶテーブルゲームで、現在はトランプなど4種類のゲームができる。

 このゲームは三角形の小さなコマと、長方形の箱を使って行われる。見た目で内容を判別できないコマにICチップが内蔵されており、箱に組み込まれたタグリーダーに近づけるとコマに対応した音声が流れる。それを聞き覚えてゲームを進める。タグリーダーに内蔵されるSDメモリーカードを交換することでゲームの変更が可能だ。

 聴覚で遊ぶことにこだわりゲームを製作した。当初はコマではなく白いトランプを用いて開発を進めたが、視覚障害者のユーザビリティーを考えて、薄くて平面的なカードから3点をつまむような三角形の立体的デザインに変えたという。

 ビジュアルに重きを置いたゲームから脱却することで、視覚障害者と健常者がともに遊べるエンターテイメントを生み出した。

 デザインを通じて日常を充実させるグッドデザインは、しばしば人と人をつなげるツールになる。身近なグッドデザインを探してコミュニケーションを活性化してみてはどうだろうか。

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