あんな人にあふれた富士スピードウエイ、はじめて見た……というのが感想でした。
そう、F1日本グランプリに行ってきました!!
まず、レースは予選日から発生した雨と、富士名物霧によって非常に荒れました。14万人の観客動員を誇ったこの富士、霧のために20周ものペースカー先導走行が行われたのです。
決勝は再開されないのではないか、このまま規定回数を先導走行でクリアしたあと、中止になるのではないか……寒さに震えながら、祈るような気持ちでコースを眺めていたのは私だけではないでしょう。
なんたって日本でF1が見られるのは1年にたった1回、しかも30年ぶりに富士で開催されるF1が中止になった日には……悲しすぎる……。
レースが再開されたときには、グランドスタンドの観戦席から、大きな歓声と拍手が沸き起こりました。
ほとんどの選手が初めて走行するこの富士のコース、国際映像でオンエアされたドライバーのコクピットからのオンボード映像では、前のマシンさえ見えない視界の悪さにビックリ!! あらためてF1ドライバーの動体視力にも感動。やっぱり「富士には魔物が棲んで」いました。一観客としてはとっても面白かった!!!
結果についてはもう、皆さんご存知かと思いますのでここで詳細にリポートするのはやめておきますが、予選でも、無事(?)レースがスタートされた決勝でも、常勝チーム以外のチームがガンガン上位浮上を繰り返し、有力候補がリタイアやコースアウトを連発するという、今シーズンでも稀に見る展開。
結果、1位は「雨ってなんのことでしょう?」とばかりの安定した走行でチェッカーを受けたハミルトン、2位は今期大苦戦のルノーから久しぶりの表彰台を獲得したHコバライネン、3位は甘いマスクで女性の心をワシヅカミのライコネンでした。
この2位、3位のファイナルラップまで続いたバトルに、雨の中、寒さに震えた観客は大きな歓声を上げました。また、フェラーリのマッサとBMWのクビサの6番手争いも、非常に見ごたえのあるサイドバイサイドのバトル。私も現地で声をからして観戦しました。
そう、快晴・真夏日のフリー走行日とは一転、予選日からは突然気温が10度以上も下がる寒いレースとなったのです。コレにはほとほと困りました。
……天候のせいですから、誰が悪いわけでもないのですが、本当に震えるほど寒かった!!
その寒さを大いに振り払い、面白いレース展開を見せてくれたF1はやっぱり最高!! でした。
しかし、この気温と天候のギャップに困ったのはチームだけではありません。観戦に慣れない観客が軽装の雨具でカラダを冷やし、グランドスタンドではわずかな屋根の下に人々が殺到し、芋の子を洗う状態。
常設トイレの行列は果てしなく長く、自動販売機のホット飲料は温まりきるまえに売りきれる、といった光景でした。会場には屋外に簡易トイレも用意されていましたが、案内がないのか観客が雨を嫌ったのかで、コチラはガラガラ。
私は今回、「鈴鹿と何が変わった?」と聞かれたら、「観客」と答えます。
観客の方の何人かにインタビューを試みたのですが、「どちらからいらっしゃいましたか?」という質問に、たくさんの方が「地元です」と答えたのが印象に残っています。また、「観戦は初めてです」とも。
雨のサーキットがこれほどまでに過酷な状態になることを知らずに遊びに来た観戦客が多いことに、改めて「F1はほかのモータースポーツとは違う」ということを実感しました。
冒頭で述べた「こんなに人が多い富士」ということは、普段サーキットに足を運ばない観戦初心者が過半数を占めた、ということでもあります。
「なにが何でもF1はナマで観戦しなくちゃ、1年が終わらない!」と息まくコアなファンから、「ふ〜ん、富士に来たんならちょっと行ってみようかな」というレベルの人たちまで、その観客のふり幅の広さといったら、鈴鹿の比ではなかったのです。
場内道路の没落で、シャトルバスに乗れなかった観客が3時間も足止めをくらってしまったこと、渋滞のために90人弱の観客が決勝レースに間に合わなかったこと、また、1コーナーの高価な仮設席が払い戻しになったりと、非常に悪評の高いレースになってしまいましたが、そしてその心情は察するに余りありますが、敢えて言わせていただきます。
「来年も富士に行こう!!」
何故ならば、今回富士スピードウエイだけが批判されていますが、おそらく観戦客も不慣れで、お互い探り探りだったこの富士日本グランプリ・初年度。きっと観客もより成熟していくと思われるのです。
私は過去2年間、鈴鹿でのグランプリを経験しています。
もちろん道路の崩落や高額な席の傾斜のゆるさなんかは、富士が改善すべき当然の課題ですが、それはおそらくたやすく改善されます。
鈴鹿だって場内から一般道に出るまで渋滞3時間、人は溢れて前に進めず、トイレはあまりの使用頻度に水が流れず大行列(ついでに言うと、新しくなったグランドスタンドのトイレ、洋式が2個しかないのも不満!)。
決してカンペキだったとは言えないですが、それでもみんな、生き生き楽しそうに、「F1」というフェスティバルを謳歌していました。
かく言う私も鈴鹿は大好きです。
それはひとえに鈴鹿の持つ歴史のなかで、それぞれの得てきた観戦のノウハウが生かされているからでしょう。きっと富士もみんなで楽しめるようになる。観戦客も一緒に成長していけると思うのです。
2009年から隔年開催が発表されたF1日本グランプリ。「どっちがどうの」なんてつまらない批評をしてないで、どうせ見に行くんだったら、両方楽しんじゃえばいいのです。
私も帰宅後、めっきり風邪をこじらせてしまいましたが、それでもやっぱりF1はハズせない。
30年ぶりの富士に立ち会えた、私たちはその瞬間を分かち合ったのですから。
今井優杏(イマイ ユウキ)
2006年にレースクイーンを引退し、レースを通じて知ったクルマの素晴らしさを伝えたい! とモータージャーナリストに転身。また、MCとしても、モータースポーツ関連イベントを中心に幅広く活動中。
愛車はFIAT・バルケッタ(赤)。ラテンのクルマを愛する情熱系。
クルマは所有も運転もJOIA(喜び)。もっと楽しみましょう!!
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