CDMAサービス開始10年で4000万の大台へ――韓国の携帯電話史を振り返る韓国携帯事情(1/2 ページ)

» 2007年01月09日 18時57分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国で、携帯電話に加入している人が4000万人を超えた。これは韓国人口の8割以上に達する数字で、CDMAサービスの開始から10年での達成となる。

 この状況に対し、「生活が変わった」「副作用も多かった」など、さまざまな見方があり、業界もユーザーも紆余曲折を経てきた結果であることは事実だ。現在の韓国市場を形作った、携帯電話史を振り返ってみよう。

10年目での4000万人突破

 韓国の携帯電話加入者数が、11月末時点で4000万を突破した。現在、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を除く韓国の人口は約4800万人程度で、単純計算で人口の8割以上が携帯電話を所持していることになる。携帯電話を使えない乳幼児などを除けば、1人1台は所持していると見ても良いほどだ。

 韓国でCDMAサービスが開始されたのは1996年、韓SK Telecom(以下、SKT)が最初だった。続いて1997年にPCSサービスが開始されるとキャリア間の競争が激化し、その成果もあるのか1998年には加入者が1000万を突破している。加入者はその後も増え続け、1999年に2000万、そして2002年には3000万を突破した。

草創期の1996〜1999年代

 1996年から1999年までは、携帯電話加入者が少なく、市場開拓の必要性が高かった時期だ。キャリアやメーカー間の競争がかなり激しく、熾烈なPR合戦が行われていた。

 また、各メーカーから、現在ではおなじみとなったブランドが登場したのもこのころだ。韓LG Information & Communications(現LG Electronics)は、自社のブランド名を「貴族の子孫」という意味の「CION」(サイオン)とした。発音は「Science」を連想させ、また最初の“C”は「Cyber」「Computer」などを連想させる。ちなみにこのブランドは、2000年に「Cyber on CYON」として“I”が“Y”に変わった。

 SKTが京セラとともに携帯電話メーカーのSK Teletechを設立したのは98年だ。SK Teletechの携帯電話ブランド「SKY」は、高級戦略やSKTでしか利用できないという特化戦略が功を奏し、とくに若者の間で人気ブランドとなった。

 ちなみにSamsung携帯の代名詞である「Anycall」ブランドは1994年に登場。「いつでも・どこでも(anytime、anywhere)通じる」というイメージは、韓国で幅広く受け入れられ、強固なブランドイメージを確立した。

 この時期には、単に音声通話ができる端末だけでなく、音声認識で発話できるものが、韓Samsung ElectronicsとLG Information & Communicationsから登場した。同じくSamsung Electronicsからは腕時計型の端末や、今でもマニア間で愛され続けているMotorola「StarTAC7760」など、さまざまな端末が登場し選択肢が広がった。

 しかし、高機能化する端末コストがそのまま販売価格に反映されていると、その端末は高嶺の花となってしまう。そこで、韓KT Freetel(現KTF)では、携帯電話に加入している法人が「KT PCS」に乗り換えた場合、端末を無料で貸し出すという思い切った戦略をとった。こうした端末の価格破壊が行われたのもこのころだ(2006年2月の記事参照)

photophoto KTFのTTLゾーン内部(左)。インターネットに接続できるPCの貸し出しやDVD上映などが行われている、会員だけのオアシスだ。「Na」ショップ(右)。NaもTTL同様、20代の若者をターゲットとした料金制およびサービスだ

 サービス面で時代を感じさせるのが、「パソコン通信」との連携サービスだ。HitelやSamsung SDS、DACOMといった韓国のパソコン通信事業者が携帯キャリアと提携し、携帯電話に証券や天気などの生活情報を知らせてくれるメッセージサービスを展開していた。

 さらにまだ未整備だった通話エリアの充実を目指し、山間部や地下鉄構内への基地局設置も急ピッチで進められた。

 現在も人気サービスとして名高い、メンバーシップサービスが開始されたのは1999年のことだ。SKTが20代前半の若者を対象に「TTL」というサービスを開始。TTL専用料金制や専用携帯、会員のみが入場できる「TTLゾーン」を用意し、若者に携帯電話を利用させる大きな契機となった。これが大きな人気となり、他キャリアもメンバーシップサービスを導入し、韓国携帯市場に定着した。

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