FeliCa決済利用促進に期待。PASMO電子マネーの沿線拡大 神尾寿の時事日想

» 2006年11月08日 12時33分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 11月7日、東京急行電鉄と三井住友カードが、非接触ICカード乗車券「PASMO」の電子マネーサービスの加盟店開拓業務で提携することを発表した(11月7日の記事参照)。三井住友カードはPASMOと「iD」の両方に対応した共用決済端末を2007年夏を目処に開発し、PASMO/iD両方の加盟店に設置、東急線沿線を中心に加盟店網を拡大していくという。

 首都圏の公共交通系電子マネーとしては、JR東日本の「Suica電子マネー」がすでに存在し、おサイフケータイ向けSuicaである「モバイルSuica」の会員数も約12万人に達している(特集参照)。JR東日本が駅構内および周辺店舗の加盟店開拓を積極的に推進した結果、首都圏や新潟、仙台のJR駅の周辺ではSuica電子マネーがほぼ浸透・定着したといっていいだろう。公共交通系の電子マネーは「電車・バスに乗るため」というチャージの動機付けがはっきりしており、それを周辺店舗で電子マネーとして使うというスタイルは、利用を促進しやすい。

私鉄沿線、街ぐるみの電子マネー普及に期待

 PASMOはSuicaとの互換性を重視して作られており、JR東日本がその実現に協力してきた(2005年12月の記事参照)。SuicaとPASMOは兄弟のような間柄であり、当初から交通乗車券と電子マネーの両方で相互利用を実現している。これにより、駅ナカ・駅周辺での電子マネー利用促進がさらに進むのは間違いない。

 さらにPASMOでは、私鉄各社が総合的な「沿線まち作り」をビジネスモデルの中核に据えていることも追い風になる。私鉄沿線には私鉄の資本グループが開発した住宅地が広がり、スーパーマーケットや飲食店などの多くが私鉄系列の資本で作られている。また本質的には電子マネーと相性のよい、主婦層と若年層、そして高齢者との接点が作りやすいのもポイントである。

 公共交通と駅と街が「線と点と面」としてつながっている私鉄沿線は、電子マネーの普及と利用促進には理想的な環境だ。私鉄各社が自らが置かれた好条件をフル活用すれば、街ぐるみでのPASMO/PASMO電子マネーの早期普及が可能だろう。

 また今回の発表では、三井住友カードが「PASMO/iD」の共用決済端末を開発し、加盟店開拓が行われることも盛り込まれている。このコラムでも何度か取り上げたが、電子マネーとFeliCaクレジットは競合するものではなく、相乗効果でFeliCa決済の利用促進をする効果がある。特にiDは、ドコモのDCMX miniの存在により、老若男女を問わず幅広い層に訴求できる。沿線住宅街の消費者層との相性もよいだろう。PASMO / iD共用端末による加盟店拡大は、双方に大きなメリットがあるのではないだろうか。

 PASMOはSuicaと連携した公共交通系電子マネーの利用促進だけでなく、これまでより幅広い地域・消費者層にFeliCa決済を普及・浸透させるだけの影響力があると思う。PASMO電子マネーが私鉄沿線の“街ぐるみ”で広がることに強く期待したい。

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