“総合力のau”が関西で狙うターゲットは?──au関西支社に聞くInterview(1/2 ページ)

» 2006年10月23日 20時31分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 番号ポータビリティ(MNP)を目前に控えて、全国各地で各キャリアの競争がヒートアップしている。時事日想では数ある“激戦区”の中でも、特に注目すべきエリアのキーパーソンにMNPに向けた姿勢を聞いてきた。

 今日の時事日想は、先週のドコモ関西へのインタビューに続いて、関西市場にフォーカス。KDDI au関西支社長の甘田純一氏に、関西エリアでのau躍進のシナリオを聞いた。

Photo KDDI au関西支社長の甘田純一氏

囲い込み施策の奏功で、市場の流動性が減少

 先週のドコモ関西インタビューでも触れたとおり、関西地域の稼働シェアは、NTTドコモが52%、auとツーカーをあわせたKDDIが32%、ソフトバンクが16%だ(10月20日の記事参照)。ドコモのシェアが全国平均よりやや低く、auの躍進によってつばぜり合いが起きているのが現状である。

 「まず関西エリアでは、新規(契約)市場が縮小しています。ツーカーからの同番変更を除きますと、前年比77%になっています。これは全国平均と比べて10%近く低い。関西は、最も新規市場がシュリンクしたマーケットだと考えています」(甘田氏)

 周知のとおり、携帯電話は普及台数9000万台を超えて新規市場が飽和傾向を見せ始めている。しかし、それ以上に新規市場を縮小させている要因が、「各キャリアの囲い込み施策の強化が奏功し、顧客流動率が大きく低下している」(甘田氏)ことだ。各キャリアが既存シェアを“守る”という視点では、これは歓迎すべきことだが、MNPを機に急成長を狙うauにとっては、各種囲い込み施策の浸透は“攻める”立場としてクリアすべきハードルになる。

 「auの場合は、ツーカーからの同番変更がありますので、これを組み入れれば純増シェアで130%とすごい数字になります。しかし、(ツーカーからの移行分を差し引いた)KDDIグループでは43%です。auとして見ると、3Gでの総合力がお客様に評価されています。全国的なauブランドの浸透が、関西地区でも好影響に繋がっています。またツーカーからの同番変更では、(家族全体で同一キャリアに契約をまとめる)家族連鎖の傾向がすでに見られ始めています」(甘田氏)

総合力のauが受け入れられてきた

 「音楽とデザイン」──。これこそがau躍進のきっかけになった要素であり、2003年から2005年にかけての同社の急成長を推進する“両輪”だった。しかし、その様相はMNPを前に、変化し始めている。

 「(auが市場で伸びているのは)総合的な商品力によるものだと思っています。我々はauが純増シェアNo.1であることを徹底して訴求してきたわけですが、その中では大きく5つのファクター(要因)を挙げています」(甘田氏)

 5つの要因とは、「3Gエリアの充実」「端末の魅力」「(着うたフルなどの)コンテンツサービス」「料金プランの魅力」「auショップのクオリティ」だという。これらの総合力が、今のau躍進の原動力になっている。

 「auがなぜ純増シェアや顧客満足度でNo.1なのか。その理由をアピールしてきましたので、そこに対するお客様の理解が深まりました。もちろん、auの3Gエリアが(ドコモのFOMAよりも)充実しているという部分がベースにあっての話ですが、その上での楽しさや安心感が評価されていると感じます。

 5つのファクターのどれが欠けてもダメで、総合力が重要になります。我々が狙っているのは、auブランドの確立です」(甘田氏)

 これまでの携帯電話市場では、ドコモが総合的なブランド力を保有し、それに対する各社が特定の分野で個性を出して成長するという図式だった。古くは「写メール」で躍進したJ-フォン(現ソフトバンク)がそうであったし、つい先頃では「デザイン」と「音楽」で躍進したauがそうだった。だが、auはMNPの年になって急速に総合力のあるブランドを指向し始めた(8月29日の記事参照)。2強時代に向けた同社の姿勢が表れていると言えるだろう。

関西はコスト意識の高い地域

 関西は関東や中部と同じく、ドコモが圧倒的な強さを誇る地域ではない。ドコモの稼働シェアが60%を超えているのは和歌山県と滋賀県だけだ。

 「大阪府と京都府はドコモの稼働シェアが全国平均よりも低い。奈良県と兵庫県が全国平均並み(のドコモのシェア)ですから、関西全域で見ますと、(ドコモが圧倒的という)保守的な傾向は見られません。いいモノやサービスをきちんと評価していただける市場です」(甘田氏)

 また関西地域の特性として甘田氏があげるのが、「コスト意識の高さ」だ。

 「関西地域の特性で言いますと、コスト意識の高さ、お得感を重視する傾向があります。これはツーカーの利用者比率が他地域よりも高いことで分かります。また(売値の安い端末など)廉価商材の構成比も高いですね。

 ほかにも、家族割の加入率が全国よりも高いことが挙げられます。東名阪の都市圏は単身世帯が多いはずなのですが、他の都市と比べて家族割加入率が高い。一般的に関西人はコスト意識の高いイメージを持たれていますが、実際の数字でもそれが表れていますね(笑)」(甘田氏)

 しかし、auのCDMA 1X WINに限れば、他社に対して圧倒的な価格競争力があるわけではない。その点では「我々(au)が料金の分野で攻め切れているかと言えば、そうではない部分もある」(甘田氏)という。

 「ただ、コスト意識というのは(毎月の)ランニングコストによるものだけとは限らない。端末の販売価格、すなわちイニシャルコストの影響もかなり大きい。家族割など、各種割引サービスのセット加入による端末価格の割引など、複合的な打ち出し方が重要になります。

 またツーカーからの移行で考えますと、今のところ流動意欲の高いお客様はしっかりと取り込めていますが、この先はコスト意識の強いお客様が残ります。こういった層のau移行には、正直なところ課題が残っています」(甘田氏)

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