レンタカーのFeliCa決済対応。その先にある可能性 神尾寿の時事日想:

» 2006年10月04日 11時10分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 9月29日、オリックス自動車がレンタカー事業を展開する「オリックスレンタカー」「ジャパレン」「エックスレンタカー」の各店舗に、非接触ICを利用したクレジット決済サービス「QUICPay」と「iD」を導入すると発表した(10月3日の記事参照)。10月から首都圏を中心とする約30店舗で先行してリーダー/ライターを導入、その後、全国800拠点に展開される予定だ。

 今回導入されるリーダー/ライターは、QUICPayとiDのそれぞれの専用型が設置されるが、「将来的には共用型リーダー/ライターの導入が視野に入っている」(オリックス自動車)。QUICPayとiDを選択した理由については、現在および将来の利用者数を鑑みた結果だという。

決済+ネットサービスの連携がしやすいレンタカー

 個人向けを主とするレンタカー市場は現在、サービス向上による顧客の囲い込みと利用率の向上が重要なテーマになっている。今回、オリックス自動車がFeliCaクレジット決済2方式を導入したのも、「レンタカーサービス全体の顧客満足度向上の一環」(オリックス自動車)という位置付けだ。今後、普及と拡大が予想されるFeliCa決済をいち早く導入することで、その可能性や効果に「アンテナを張る」(オリックス自動車)狙いもある。

 一方、レンタカービジネス全体を俯瞰すると、そこは単なるFeliCa決済だけでなく、おサイフケータイを使った「決済+ネットサービス」の連携がしやすい市場だ。大手レンタカー事業者のほぼすべてが携帯電話サイトを使った予約や空車検索機能を提供しており、独自の会員サービスやポイントプログラムを用意している。おサイフケータイを前提にすれば、例えば空車の多い時期や地域などピンポイントで独自のダブルポイントキャンペーンを行ったり、トルカやポイント連携を使った異業種連携や送客ビジネスの展開などが考えられそうだ。特に今後、ガソリンスタンドや観光施設、ショッピングセンター(SC)のFeliCa決済導入が広がるため、そことの連携が始まれば様々な効果が考えられる。

 なお、オリックス自動車は会員サービス「プライムメンバーズクラブ」を持つが、今のところおサイフケータイ対応は考えていないという。まずはFeliCa決済だけを導入するスタンスだ。

もうひとつの可能性は「カーシェアリング」

 今回、FeliCa決済の導入が始まったのはレンタカー分野においてだが、もうひとつの可能性として筆者が注目しているのが、カーシェアリングビジネスである。

 カーシェアリングとはその名の通り、1台のクルマを複数のメンバーが利用する会員制の組織で、欧州や北米では広がりを見せている。特に欧州では公共交通機関との連携が盛んであり、鉄道・バス・タクシーに次ぐ新たな公共交通として活用されている。

 カーシェアリングは形態としてはレンタカーに似ているが、その利用が「近距離・短時間・日常」が主であることが大きな特徴である。いわゆる“ちょい乗り”のユーザーにも使いやすくなっており、基本料が安くて貸渡料金の課金単位が15分と細かい。

 カーシェアリング分野の草分けであるCEVシェアリングでは、クルマの鍵としてFeliCa電子錠を使用し、無人の貸出システムを実現している。ユーザーはネットや携帯電話で最寄りの車両ステーションにあるクルマを予約。その時間帯にFeliCaカードかおサイフケータイをクルマにかざすと、そのまま乗り込むことができる。レンタカーのように、借りる度に手続きや決済をする必要がない。

 CEVシェアリングが利用するのはFeliCaの電子錠システムの応用で、今のところFeliCa決済には対応していない。しかし同社はオリックス自動車の子会社であり、「具体的なことは何も決まっていないが、将来的な可能性としてFeliCa決済を使った公共交通連携など様々なシナリオが考えられる」(オリックス自動車)という。カーシェアリングの利用形態とFeliCaが鉄道など公共交通分野で幅広く利用されていることを考えると、その連携サービスには期待が持てそうだ。

 昨今では、欧州で都市部のロードプライシング制度が広がっており、日本でも再び注目されはじめている。もしロードプライシングが日本でも導入されれば、公共交通と低公害車カーシェアリングの連携サービスのニーズが高くなるだろう。レンタカーはもちろん、新分野としてカーシェアリングでのおサイフケータイ活用に注目していて損はなさそうだ。

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