M702iS/iGが売れれば、何かが変わる 神尾寿の時事日想:

» 2006年07月07日 15時55分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 7月4日、ドコモの702ixシリーズ6機種が発表された(7月4日の記事参照)。今年1月の702iシリーズ発表から約半年での新機種投入であり、902iSの発売からの間もない。ドコモは今年に入ってから「物量戦」を展開しているが、今回の702ixシリーズも夏モデルとして投入されることで、夏商戦の店頭はかつてないほどのドコモ端末で埋め尽くされそうだ。特に量販店と併売店では、au、ボーダフォンの端末ラインアップに勢いがないように感じられてしまうだろう。

 今回の702ixシリーズの総評は別の機会に譲るとして、筆者が注目しているのが「M702iS」(7月4日の記事参照)と、「M702iG」(7月4日の記事参照)の行方だ。これが米Motorola製のRAZRベースの端末であることは既報の通り。海外メーカー製としては初めて、主流ラインアップである70xシリーズの中に入った。

これまでの海外製メーカー端末とは違う扱い

 今回、M702iS/iGが主流ラインアップに入れたのは、大きく2つの理由が考えられる。

「M702iS」シリーズ(上)、「M702iG」シリーズ(下)

 1つは同機のUIが“ドコモ仕様”になっていること。変換器を介してであるがFOMA共通アダプターに対応し、日本向けにカスタマイズされていることだ。ここが同じモトローラ製の「ビジネスFOMA M1000」(2005年4月14日の記事参照)や、ノキア製の「NM850iG」(2月15日の記事参照)と違う。

 さらにもう1つの理由が、FOMAプラスエリアに対応したことだろう。これまで海外メーカー製のFOMAは、日本だけの仕様であるFOMAプラスエリアに対応していなかった。しかし今回は、「(M702iS/iGも含めて)702ixシリーズはすべてFOMAプラスエリア対応。1.7GHzには未対応」(増田智子・NTTドコモ マルチメディアサービス部サービスマーケティング部担当)だという。

M702iS/iGが売れれば、販社が変わる

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 UIとエリアの対応で、M702iS/iGは日本メーカー製端末と大きな違いがない。これはユーザーに受け入れられやすいだけでなく、販売会社が「売りやすい」という点で、非常に重要なポイントである。

 これまで海外メーカー製のモデルがなかなか浸透しなかった背景として、ドコモショップなど専売店も含む販売会社が積極的に売りたがらなかったという理由がある。日本メーカー製のモデルとはUIやエリア対応で違いがあり、販売時の説明やサポートの手間が増える。一般ユーザーが飛びつきにくく、これまで大人気というほど売れたこともない。少しでも販売実績を積み上げたい販社が、海外メーカー製端末に消極的になるのは仕方がないところだろう。

 しかしM702iS/iGは主流モデルとして、日本メーカーとほぼ同じように売れるモデルに仕上がった。しかも、ITmediaが行っている「+D QUICK POLL」の経過を見るかぎり、ユーザーの反応もよさそうだ。もし日本メーカー製端末と同じように売れれば、海外メーカー製端末に対する販社のマインドが大きく変わるだろう。特に地方の専売店が変われば、海外メーカー製端末が日本市場に進出する橋頭堡になりえる。

 筆者は日本市場にも海外メーカー製端末が取れるシェアが10〜15%あると考えている。さらに、ここは海外メーカーとキャリアがマーケティングとブランディングを上手にやれば、プレミアム市場とする事も不可能ではない。安さだけではない海外メーカーの魅力が広がれば、日本メーカーへの良い刺激にもなるだろう。

 M702iS/iGが、もし売れれば。販社が変わり、ユーザーが変わり、日本市場の何かが変わるかもしれない。

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