違法駐車取り締まり強化と、携帯ビジネスの意外な関係神尾寿の時事日想:

» 2006年06月02日 16時47分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 6月1日、改正道交法の違法駐車取り締まり強化が施行された。今回の改正道交法では、「民間の駐車監視員制度の導入」「短時間の駐車でも取り締まり対象にする」「使用者が反則金を納付しない場合には所有者に違反金納付義務が生ずる」といった取り締まり強化が行われている。警察庁では、これらの違法駐車取り締まり強化によって、違法駐車の取り締まり数を従来の2〜3倍にすることを目指している。

 この違法駐車取り締まり強化の影響は、携帯電話業界にも現れている。特に需要が大きいのが、コインパーキングなど駐車場の場所や満車空車情報の検索サービスで、6月1日にはKDDIの「EZナビウォーク」も正式対応した(5月31日の記事参照)。駐車場関連情報は、以前からホンダの「インターナビ」などテレマティクス分野でも対応していたが、今後、カーナビでの対応も進んでいくだろう。

 またキャリアのビジネスでは、満車空車情報の取得のために駐車場の“オンライン化”が進んでいるのも見逃せないポイントだ。例えば、コインパーキング最大手のパーク24では、すでに「タイムス」駐車場にTONIC(Times Online Network & Infomation Center)と呼ばれるオンライン管理システムを導入しているが、このバックボーン回線にはNTTドコモのDoPa(2005年6月1日の記事参照)が使われている。

おサイフケータイの活用にも期待

 さらに、違法駐車の取り締まり強化は、おサイフケータイ活用の追い風にもなる。

 今後、コインパーキングの増加とオンライン化が進むと、管理コスト削減の事業者ニーズから、キャッシュレス化の流れが起きるのは確実だ。実際、すでにオンライン化を完了しているパーク24では、クレジットカードやFeliCa決済対応のコインパーキングを増やしている。

 FeliCaを使った電子マネーやクレジット決済サービスでは、100円未満の課金をしても管理の手間やコストが増大しない。これは大きなメリットだ。例えば、今回の改正道交法では短時間の駐車も取り締まり対象になるが、おサイフケータイ限定で「5分=30円」といった短時間向け低料金設定を実現すれば、新たな駐車ニーズに対応できる。また逆に、利用時間に応じて変動する割引率を設定するなど、10円単位の端数が生じやすいサービスも可能になるだろう。

 おサイフケータイの持つ通信機能とFeliCa決済の組み合わせにも、新サービスの可能性がある。その中でも注目なのが、駐車場のオンライン予約サービスだ。ユーザーがあらかじめ携帯電話側で駐車場の予約・決済をしておき、予約した駐車場で自分のおサイフケータイをかざすと、その駐車スペースが使えるようになるイメージだ。駐車場を取り巻く環境は、今後、需要が供給を上回る状況が続く。それを鑑みれば、「予約料金がかかっても確実に止めたい」というニーズに応えるサービスには可能性があるだろう。

 違法駐車の取り締まり強化は、「駐車場の整備が未熟な日本」の現状と問題を浮き彫りにする。施行後しばらくは、制度と現実のギャップによる混乱が生じるだろう。一方で、その混乱は駐車場ニーズの高まりになり、民間を中心に駐車場の整備を促し、よりよく多様なサービスを求める声にもなるだろう。そこに携帯電話を使った新ビジネスの可能性がある。

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