おサイフケータイを積極導入したドラッグストアの雄が今思うことは――マツモトキヨシに聞くInterview: (1/2 ページ)

» 2006年05月12日 19時33分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 大手コンビニエンスストアを中心に、流通系のビジネスではFeliCa/モバイルFeliCa対応が増加している。特に電子マネーとポイントプログラムの組み合わせと、おサイフケータイの活用は、流通業界の最新トレンドといえる。

 ドラッグストア大手のマツモトキヨシでは、2004年9月からおサイフケータイを利用した会員向けサービス「マツキヨポイントアプリ」を開始した(2005年4月15日の記事参照)。2005年8月1日からは全店舗で、電子マネー「Edy」によるレジ決済と、マツキヨポイントアプリが利用できるようになっている(2005年7月27日の記事参照)。マツキヨポイントアプリは現在、NTTドコモとauのおサイフケータイユーザーが利用できる。

 ここではマツモトキヨシ営業本部営業企画部販売促進課課長の舘野純一氏にインタビューを行い、先行事業者であるマツモトキヨシが、おサイフケータイの効果についてどのように見ているか、話を聞いた。

マツモトキヨシ営業本部営業企画部販売促進課課長の舘野純一氏

成長産業の内実は「激しい消耗戦」

 マツモトキヨシを代表とするドラッグストアは、店舗の大型化や日用品の取扱品目の増加、積極的な新規店舗の出店もあり、ここ数年で急成長してきた業界だ。“ヘルス&ビューティケア”と呼ばれる医薬品や健康関連商品、化粧品など専門分野で利益を確保する一方で、日用品は高い価格競争力を持つ。さらに店舗の長時間営業化で、コンビニエンスストアやスーパーマーケットに対抗する勢力になってきている。現在の市場規模は約4兆円、2010年には約10兆円ビジネスにまで成長すると予測されている。

 しかし舘野氏は、「マスコミさんが騒いでいるだけで、ドラッグストア業界の実情は厳しい」と話す。

 「2〜3年前くらいまでは伸びがよかったのですが、デフレや(ドラッグストア同士の)競争激化で苦しい状況に陥っています。

 ドラッグストアは事業者ごとの規模が小さいので、店舗ごとの価格設定を比較的柔軟に行える。これはどういうことかというと、競合チェーン店の安売りに、すぐに対抗値下げが行われて、原価を無視した価格競争に陥りやすいということです。(ドラッグストアは)競合店対策を盛んにやらなければならず、それを実際にやっているのが現状です」(舘野氏)

 特に厳しいのが、競合他社、そして店舗間の価格競争だ。

 「利益率は毎年下がっています。ドラッグストアは1店舗あたりの投資額が少なくできるので、簡単にお店が出せる。そのため、地域で(過当競争になる)オーバーストア状態になります。競合他社との競争は激しいですし、同じマツモトキヨシの店舗同士で競合することもあります」(舘野氏)

 時として、同じマツモトキヨシの店舗同士ですら競合する。なぜそんなことをするかというと、「条件のいい地域・物件で空きが見つかった場合、よそ(競合他社)がくるくらいなら、個々の(店舗あたり)の収益を損ねてでもうちが出店した方がマシ。社内競合させてしまった方がいい」(舘野氏)からだ。ドラッグストアは傍目には成長業界であるが、その中での競争、消耗戦は熾烈だ。

photo 首都圏のあちこちで見かける、黄色い店舗が目印のマツモトキヨシ。都心や住宅地、大型スーパー内部などに広く出店している
photo ドラッグストアだけでなく、総合スーパーなど様々な店舗がある。写真は、マツモトキヨシの本社がある新松戸駅前のスーパー
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