クアルコムがモバイルWiMAXに懐疑的な見方をするもうひとつの要素が、リンクバジェットの点である。リンクバジェットとは基地局から端末までの電波の到達距離をどれだけに設定するかということを表す値で、dBで示す。こリンクバジェットが大きいほど到達距離が長くなるため、基地局あたりのカバーエリア(セル半径)を大きく取れるという。
「EV-DO Rev.AとモバイルWiMAXを比較した場合、我々がどう試算しても後者の方がリンクバジェットが5dBほど小さい。これはモバイルWiMAXは(EV-DO Rev.Aよりも)距離が出ないことを意味します。すなわち、セル半径が小さいということですから、携帯電話の基地局に重畳して設置すると、セルの端の部分ではワイヤレスブロードバンドとして期待されるスピードが出ない。これも(新たな周波数を使って導入する)合理性に反するのではないかと考えています」(山田氏)
クアルコムによると、これらの試算はすべて、公開されているモバイルWiMAXの仕様をもとにしているという。以前本連載で掲載したインタビュー「KDDIにとってのモバイルWiMAX」の中で、KDDI技術統括本部技術開発本部長の渡辺文夫氏は、「モバイルWiMAXの技術は現在も改良が続いている」と語っている(2月10日の記事参照)。山田氏はこの点について、「クアルコム側の試算に誤りがあれば、ぜひ指摘してほしい」と強調した。
「クアルコムとしては、モバイルWiMAXを推進する方々と議論し、(クアルコムとしてもモバイルWiMAXを)正しく理解したいと考えています。今回ワイヤレスブロードバンドとして新たな周波数が割り当てられるわけですから、業界内で議論を尽くして、それがキャリアとエンドユーザーの両方にとってベストな形にならなければなりません」(山田氏)
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