2005年のおサイフケータイは決済“以外”が鍵mobidec 2005

» 2005年12月01日 17時41分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 2004年6月にスタートし、2005年10月に650万契約を達成したモバイルFeliCa端末(10月28日の記事参照)。au、ボーダフォンのサービスも開始し、利用できる端末もシーンも増えてきている。

 登場から約1年半で、ようやく使い方が変わってきつつある、と話すのはフェリカネットワークスソリューションビジネス部の平児玉功氏だ。「これまでは『おサイフケータイ』という名称であることもあり、電子マネーの印象が強かった。しかし、会員証や鍵など、現金以外のところも使えるようになってこそ『おサイフ』。これからは、決済以外にもいろいろな使い方があることを理解してもらうフェーズだ」(平児玉氏)

2004年6月に対応サービスの提供が始まったモバイルFeliCa。フェリカネットワークスでは、2006年1月に1200万台の普及を見込んでいる

 決済以外のソリューションとして例に挙がったのが、KESAKAシステム「kesakaサービス」とNECの「トクトクポケット」だ。KESAKAシステム専務の藤井惠介氏とNEC FeliCaビジネスソリューションセンターの田辺正道氏とが登場、それぞれの導入事例について紹介した。

「おサイフケータイで鍵」の意外な使われ方――kesakaサービス

 福岡市にあるKESAKAシステムは、FeliCaチップを「電子鍵」として利用する電子錠システムを開発、新築マンションに導入している企業(7月20日の記事参照)。複数のマンションが同社のシステムを導入し、すでにいくつかは稼働している。

 おサイフケータイやFeliCa搭載カードを鍵として扉の施錠/解錠を行える基本機能に加え、おサイフケータイ利用者は、月額利用料を支払うと追加サービス(kesakaサービス)を受けられる。サービスの内容は、鍵の閉め忘れの確認、解錠/施錠履歴確認、合い鍵を発行しメールで送付する機能、マンション内の掲示や回覧などをメッセージとして受信する機能などだ。

 藤井氏は、kesakaサービスを導入したマンション「ジョイナス吉塚」(福岡県)での利用状況について紹介した。ジョイナス吉塚では全戸がFeliCa電子錠になっており、全員がFeliCaカードあるいはおサイフケータイの鍵を使っている。

 おサイフケータイを利用したkesakaサービスに加入しているのは、137世帯のうち54%。これは2005年1月末の数字で、11月には67%の世帯が加入している。最も利用されているのは鍵をかけたかを確認する機能で、次が家族が帰ってきたかを施錠/解錠履歴で確認する機能だという。

2005年1月末時点でのkesakaサービス加入世帯の割合(上)と、利用している機能(下)

 施錠/解錠履歴は意外な使われ方をしていた、と藤井氏は話す。「お子さんが親御さん夫婦にマンションを購入してプレゼントし、親御さんはカード型の鍵を使用、お子さんは一緒に住んでいないので、携帯から両親の安否を確認するのに利用しているケースがありました。子供が帰ってきたかを親が確認するための機能だと考えていたので、意外な使い方だった」

kesakaサービスのiアプリ画面

 今後はさらに機能を増やしていきたいといい、サービスの連携が重要だとする。連携するのは家電(照明、エアコンなど)や宅配ボックス、住戸内のカメラモニターといったものだ。来年には家電の遠隔操作機能とシステムを連携させたマンションが登場する見込みだという。

複数の事業者のクーポンをまとめて――トクトクポケット

 トクトクポケットは、複数の事業者の会員証やクーポンといった情報をまとめて管理できる、おサイフケータイ対応のシステムだ(2004年11月29日の記事参照)。NECではトクトクポケットのアプリケーションを、ドコモ向けには7月から、au向けには10月から提供している。ボーダフォン向けにも今後対応予定だ。

 現在トクトクポケットは、サークルKサンクス(2月17日の記事参照)、H.I.S.(9月7日の記事参照)などで採用されている。

 サークルKサンクスでは、トクトクポケットを対象商品の値引きサービスや、スタンプサービスに利用している。サークルKサンクスでは全店でEdyを導入しているため、おサイフケータイをリーダー/ライターにかざせば、Edy決済と同時に値引きやスタンプのサービスを行えるのがメリットといえる。

 H.I.Sでは現在、3店舗でトクトクポケットを利用したサービスを提供中。三者間通信機能(10月29日の記事参照)を利用して、リーダー/ライターからURLをおサイフケータイに送信、サイトにアクセスしてアンケートに答えると抽選で旅行券が当たる、というキャンペーンを実施している。

 ユーザーにとっては「アプリを1回ダウンロードするだけで複数企業のサービスを利用できる」「企業サイトにアクセスしなくても、ポイントやクーポンなどをアプリ上で確認できる」といったメリットがある、と田辺氏は説明。また事業者にとっては「ポイントやクーポン、スタンプ、お知らせなど複数のサービスを提供できる」「既存のポイントカードシステムなどを生かしながら顧客管理・囲い込みができる」「同じトクトクポケットを利用する他の企業とクーポン交換の連携などができる」「アプリを開発する必要なく3キャリアに対応」「3キャリアやフェリカネットワークスへの各種申請をNECが代行する」といったメリットがある、とした。

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