来年のトレンドは「ケータイ+電子マネー+クレジットカード」の融合と競争(前編) 神尾寿の時事日想

» 2005年11月11日 04時19分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 サンフランシスコの地で、筆者は悔しい思いをしている。

 なぜならこの1週間、将来の携帯電話産業にとって重要な動きが相次いだからだ。サンフランシスコでITS世界会議に参加し、自動車ビジネスの将来を取材しながらも、「どうして同じ時期に……」とボヤきながら日本の最新動向について情報収集する毎日である。

 今週後半の動きで重要なものは、大きく2つある。

 1つは携帯電話とクレジットカードの融合の動きだ。これは先々週から始まっていたものであるが、NTTドコモのクレジットサービス「iD」が発表されたことで動きが急加速した(11月8日の記事参照)。おサイフケータイ向けのクレジットサービスとしてはJCBなどの「QUICPay」があるが、ドコモ自身が取り組むiDは端末やリーダーライターの普及、サービスの訴求の点で有利であり、新たなクレジットサービス顧客層を生み出す可能性が高い(11月8日の記事参照)

 さらにiDなどFeliCaを使ったクレジットサービスにとって、日本市場の現状は有利でもある。磁気式クレジットカードはスキミングなどのリスクを抱えており、クレジットカード業界は接触IC型クレジットカードの普及に力を入れている。しかし、接触IC型クレジットカードは未だ普及の途上にある。

 例えば、ビザ・インターナショナルの話によると、接触IC型クレジットカードの普及率は全体の3割以上だが、肝心の店舗側端末や利用率については「単体クレジット端末のうち接触IC型クレジットカードに対応するのは約15%程度、接触IC型クレジットカードでの決済率はショッピング取扱高11兆円の5パーセント未満」(ビザ・インターナショナル広報)だという。

 クレジットカード業界とユーザーにとって、セキュリティは重要な問題だ。接触IC型の店舗側端末が普及しきっていない今なら、モバイルFeliCaを使うおサイフケータイ対応のPOSレジや専用端末が普及する素地がある。

 むろん、店舗側端末の普及には事業者側のメリットと“動機付け”が欠かせない。その点で、単純に今の磁気式クレジットカードを代替する接触IC型に比べて、おサイフケータイは「トルカ」(11月7日の記事参照)やメールなどを用いたCRM機能があり、有利である。ドコモやJCB、そして実際のシステム導入にあたる業者が「クレジットサービス+α」のメリット訴求をすれば、接触ICカードよりも店舗側は導入に前向きになるかもしれない。

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