EZ助手席ナビのインパクト神尾寿の時事日想:

» 2005年09月07日 15時59分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 9月8日、KDDIがGPS携帯電話向けの新サービス「EZ助手席ナビ」を発表した(9月1日の記事参照)。これはパッセンジャー利用を前提として、auが強みとする携帯電話のGPS機能を生かし、クルマ向けのナビゲーションサービスを提供しようというものだ。EZナビウォークのクルマ向け発展版という位置づけである。

 筆者もさっそく試乗したが、その出来映えは「携帯電話・パッセンジャー向けの紙地図の代わり」としてならば納得できるレベル。携帯電話をハードウェアとして使うため、当然ながら自立センサーは使えず、車速情報も取れない。それを考えれば、お台場で測位誤差平均が目測で10〜20メートル程度だったのは納得できるクオリティだ。マップマッチング機能が優秀なのだろう。

 しかしその一方で、交差点での追従がスムーズでなかったり、目的地設定をしなければナビ表示がされないといった課題もあった。

 KDDIも限界は理解しているようで、コンセプトは「カーナビよりも安く、紙地図よりも便利」(KDDI)にあるという。マップガイドの代わりにケータイ片手で、パッセンジャーがドライバーに道案内する。そういう使い方が前提であり、当初から専用カーナビと競合する商品を目指していない。

破格に安い地図更新

 しかし、EZ助手席ナビがカーナビ業界に与えるインパクトは小さくない。

 その要素はいくつかあるが、中でも最大のインパクトは“価格”だ。EZ助手席ナビは、定額利用のコースで月額315円。ここに地図の更新料が含まれており、地図は「最低でも年4回は更新する」(ナビタイムジャパン)という。つまり、年間3780円で年4回更新の最新地図が利用できる計算になる。

 カーナビ業界では、地図更新料は1回2万円〜2万5千円が相場だ。ホンダなどが率先して地図更新料を下げる施策をとっているが、それでも1回1万円を下回ることはない。これは「全国地図を一斉に更新すること、地図だけでなく基本ソフトウェアのバージョンアップも同時に行っていること、DVD配布やHDD書き換えにコストがかかること、などが理由」(カーナビメーカー関係者)である。

 通信経由での地図・ソフトウェア書き換えを行うというコンセプトで登場したパイオニアの「Air Navi」も、その利用料はパケット通信費込みで月額1980円。年間前払い割引でも2万1800円だ。

 専用カーナビは地図更新の料金が高く、その状況は今も変わっていない。しかし、コンセプトは違えど、EZ助手席ナビが「年4回更新でも年間3780円の地図」を出すことで、ユーザーが専用カーナビに抱く地図更新の割高感は大きくなるだろう。

 EZ助手席ナビはカーナビ市場に新たな一分野を築くだけでなく、従来の専用カーナビ市場/機能にも変化のきっかけを与える可能性がありそうだ。

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