KDDI、FeliCaビジネスの勝算(前編) 神尾寿の時事日想: (1/2 ページ)

» 2005年08月22日 11時07分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 8月2日、KDDIは非接触IC「モバイルFeliCa」を使ったビジネスに参入すると発表(8月2日の記事参照)、ドコモが先行するiモードFeliCa(おサイフケータイ)事業に、auも「EZ FeliCa」として参入する方針を示した(7月11日の記事参照)。9月にはW32SとW32Hの2機種を投入する(8月2日の記事参照)

 周知の通り、おサイフケータイは2004年7月からドコモが手がけてきた新分野であり、同社はモバイルFeliCa搭載端末を投入するだけでなく、FeliCaリーダー/ライターの整備に投資し、おサイフケータイを使ったクレジットカード事業を立ち上げようとするなど(4月27日の記事参照)、モバイルFeliCaを足がかりに携帯電話ビジネスの裾野を拡大しようとしている。ドコモの言葉を借りれば、「携帯電話が社会インフラ化する次の5年」の基幹事業であるため、同社のおサイフケータイ分野での動きは速く、その姿勢と存在感は強力だ。“たった1年”かもしれないが、先行するドコモと、後発組キャリアとの距離は広がっている。

 先行するドコモに対して、“後発”KDDIはどのような戦略と勝算を持って戦うのか。

 今日と明日の時事日想は特別編として、KDDIau商品企画本部FeliCa推進室FeliCa開発グループリーダーの小柳琢磨次長へのインタビューをもとに、KDDIのFeliCa事業についてのレポートをお届けする。

おサイフケータイは「メディア化」の一部

 KDDIのFeliCa事業を見る上で、まず気になるのが同社がおサイフケータイをどう位置づけているか、である。ここ最近のauは音楽・映像分野での先行など、メディア路線の強化が顕著だが、FeliCa事業はこの中で何を狙っているのだろうか。

 「FeliCaというのは社会基盤的なサービスであると認識しています。auの強みは(音楽分野など)メディア化での先行なのですが、これはどちらかというリテラシーの高い人向けという面がありました。しかし、FeliCaは生活に密着した身近なものですから、(auの従来のサービスよりも)ユーザー層を広くできるんじゃないか。ここに期待しています」(小柳氏)

 ライバルのNTTドコモが、おサイフケータイに着手したきっかけも、「iモードがリテラシーの高い一部のユーザーのものになっている」という点だった(2004年2月20日の記事参照)。おサイフケータイには「幅広いユーザー層の携帯電話利用を底上げするサービス」という役割がある。auが期待する部分も、まずはそこにあるという。

 「もちろん、従来の路線とFeliCa事業との整合性もあります。弊社の小野寺(社長)が、かねてより『携帯電話のメディア化』を提唱していますが、FeliCaはゲートウェイとしての機能が優れており、メディア路線を(リアル社会にも)拡大する上で重要だと考えています」(小柳氏)

 ここで重要なポイントが2つある。

 ひとつはauのターゲット層の微妙な変化だ。3G移行期以降のauは、着うたや着うたフルでの先行など、先進的で感度の高いサービスを矢継ぎ早に投入し、リテラシーの高いユーザーを“狙い打ち”にしてきた面があった。しかし、おサイフケータイに期待するのは“裾野の拡大”である。auはこれまで、若年層やアーリーアダプターと呼ばれる高感度層をターゲットにしてきたが、その対象が拡大してきているようだ。

 もう1つが、それでもやはりFeliCa事業がメディア路線の一部であるという点だろう。詳しくは後述するが、同社は従来型コンテンツサービスとFeliCaサービスの連携も重視している。Javaよりも応用性のあるBREWが採用されているのも、そのためだという。

タイミングを見極められるのが、後発の強み

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