膨大な領収書との格闘が済んだらいいいよ決算だ。ここでも知人から質問された固定資産と減価償却について少し解説しておこう。10万円未満の備品などは消耗品費としてその年に全額経費にできるが、10万円以上のものは固定資産と呼ばれ耐用年数に分割して経費とする。
例えば300万円の車を購入した場合、300万円が買った年の経費になるわけではない。車は耐用年数が6年なので、50万円ずつ6年に分けて経費とする仕組みとなっていて減価償却という。耐用年数はテレビは5年、PCは4年、カメラは5年、鉄筋コンクリートの事務所は50年などと定められている。
実際にやよいの青色申告12で固定資産を購入した場合の処理をしてみよう。3月12日に12万円のPCを購入した場合、簡単取引入力から[現金][固定資産]、PCを購入した[取引日付][金額を入力する。仕訳を見ると借方が「工具器具備品」となっている。この「工具器具備品」は経費の科目ではなく固定資産の科目だ。
別のところで確かめてみよう。有形固定資産の工具器具備品の3月のところに12万円と修正されている(4月以降は累積金額)。
経費のところを見ると、これまで記帳した消耗品のマウス2000円と水道光熱費の電気代だけが記帳され、3月に購入したPCは経費となっていない。
購入した年の経費ではなく、耐用年数に分けて経費とする固定資産は[決算・申告]タブの[固定資産管理]に登録をする必要がある。[固定資産管理]の[新規作成]をクリックすると、入力画面が立ち上がる。ここで名称、科目、取得年月日、金額などを入力。償却方法を選びPCの場合は耐用年数を4年と入力すると自動的に計算される仕組みだ。12万円を4年で割ると3万円となるが、正確には月単位で計算するので3月から12月の10カ月が償却期間となる。つまり3万円の12分の10に当たる2万5000円がこの年の償却金額(経費として算入できる金額)となるわけだ。
記入が終わったら登録ボタンを押すと一覧に登録が完了。この例では4年後の平成27年の2月まで経費として分割される。他の固定資産も登録し、最後に仕訳書出のアイコンを押すと本決算仕訳として書き出し完了だ。これにより、3月ではなく決算仕訳の個所に経費科目である減価償却費として2万5000円が記帳される。
知人からの質問には、「簡単仕訳入力と固定資産管理に入力すると二重に入力されるのでは」という疑問も含まれていた。確かにそう感じられる操作だが、簡単取引入力では固定資産を買って現金を支払ったことを入力、固定資産管理では買った固定資産をどのように(何年で)経費にするかを入力すると理解しよう。
前回の記事「青色申告って何? 個人事業主の賢い節税を考える」で紹介した通り、青色申告者の特権として30万円未満の固定資産をその年に償却できる「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」という制度がある。もうかった年ならこの特例を使えば税率の高い年に経費にできるので節税効果は高い。その場合は償却方法を即時償却に変更し摘要欄に「措置法28の2」と記入すれば12万円をまとめて経費にできる。
決算処理の準備でもう1つ行わなければならないのが家事按分。前に説明したように事業と個人の混ざり合う水道光熱費、車、電話代などをそれぞれの比率に按分する作業だ。家事按分をクリックし対象となる科目、補助科目とそれぞれの按分する比率を設定し、仕訳書出をクリックすると家事分が経費から自動的に差し引かれる。ごっそり経費が減るので毎年ガッカリする作業だ。
これで決算準備は完了。いよいよ決算書の作成だ。青色申告決算書をクリックしよう。やよいの青色申告12では確定申告モジュールと呼ばれる出力機能がより使いやすくなった。左側の操作ナビに作業の流れ、チェックポイントが表示され初心でも何をすればいいかがすぐに分かるようになっている。
「決算前に行う作業を確認しよう」をクリックすると先ほど行った固定資産管理や家事按分を行うように指示してくれる。その下の「青色申告決算書(一般用)を作成しよう」をクリックすると決算書が開き住所などから順番に作業内容を指示、画面の明るい窓の部分を入力すればいいことが分かる。
画面の記入欄の部分をクリックすると入力画面がポップアップ、順番に入力すれば完成する仕組みだ。記入もれなどがあると赤枠で修正のためのガイドが示されるので、指示に従って修正すれば損益計算書や貸借対照表が完成する。筆者のように簿記を理解していないと、書かれている内容は分からないが取りあえず提出書類は完成できる。
↓l_shk\_756.jpg,, 地代家賃の内訳を記入して完成
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