ドラッカーブーム再び? 四人目の石工が語った働く目的最強フレームワーカーへの道

「マネジメントの父」――経営学の第一人者として知られるピーター・ドラッカー博士のことである。2005年に亡くなった後、世界は目まぐるしく変化したが、最近再びドラッカー博士の関連本が出てきた。

» 2010年03月08日 13時31分 公開
[永田豊志Business Media 誠]
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 「マネジメントの父」と呼ばれ、世界中でその著作がベストセラーになるなど、経営学の第一人者として知られるピーター・ドラッカー博士。2005年に亡くなった後、世界は目まぐるしく変化しましたが、それでも、ドラッカー博士の名言の1つ1つは、人生や仕事の本質をするどく突いています。

 関連本も多く、最近では『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』がベストセラー。素人マネジャーと野球部の仲間たちが甲子園を目指して奮闘する青春小説というストーリー仕立てが特徴。女子マネジャーのみなみちゃんが、ドラッカーの

『マネジメント』を間違って買ってしまうという軽妙なタッチで、幅広い層にその名前が知れ渡っているようです。

 ところで、ドラッカー博士は、その著書の中で、たびたび「仕事を通して得られる価値」について言及しています。人生は価値を創り上げるプロセスそのもの。自分の求める価値を追い求め、社会が求める価値を提供することで、経済的にも豊かになります。仕事において本来の目的や意味を問い直す時に、参考にしたいドラッカー博士の有名なたとえ話があるので紹介しましょう。

 ある建築現場で、何をしているのかを聞かれた三人の石工のうち、

「一人目の男は『これで食べている』と答えた。

二人目は手を休めずに『腕のいい石工の仕事をしている』と答えた。

三人目は目を輝かせて『国で一番の教会を建てている』と答えた」

『マネジメント』(ダイヤモンド社刊)より

 何のために、働くのか? それが経済的な理由だけでは、人生の大半を費やすだけの価値があるでしょうか? 仕事を通じて新しい価値を生み出し、それによって自分自身が成長するのが、仕事の醍醐味なのではないでしょうか? しかし、ドラッカー博士のたとえ話には、後日談があったようです。

 すると、最後に奥にいた四人目の男が答えた。「私は皆の心のよりどころを作っている」と。

『実践するドラッカー【思考編】』(佐藤等:編著)より

 仕事に深く入り込むと、どうしても本来の目的や価値を見失いがち。目先の利益や効率性に関心が強まる傾向にあります。確かに利益は企業経営を継続するためには不可欠ですが、最終目的ではないはず。企業が理念やミッションによって存在意義を示すように、個人の仕事も利益を超越した目的や価値を目指すべきです。

 「苦しんでいる患者を少しでも楽にする」「家さがしで困っている人の立場でアシストしてあげる」「うちのホテルで過ごした家族に幸せを感じてもらう」といった仕事本来の価値が、多くの人の共感を呼び、ビジネスとして成立するのです。利益はその活動の最後に現れる指標にすぎないのです。

  • あなたの仕事は、何を作っていますか?
  • あなたの仕事は、どのように憶えられていたいですか?
  • あなたの仕事は、どのような価値を生み出していますか?

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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