ドライバーの視界に違和感なく表示を重ね合わせる――デンソーのHUD
デンソーは、ドライバーの目から2m離れた前方に、10インチサイズの映像が表示されるヘッドアップディスプレイ(HUD)を開発した。車両情報やカーナビ情報を、ドライバーから見える風景に重ね合わせて違和感なく表示する機能を備えている。
デンソーは2012年10月19日、自動車用として「世界最大」(同社)の表示サイズとなるヘッドアップディスプレイ(HUD)を開発したと発表した。ダッシュボードに埋め込んだ液晶ディスプレイの映像を、凹面鏡などを使って反射・拡大してフロントガラスに映し出すタイプの製品で、ドライバーの目から2メートル離れた前方に、10インチサイズの映像が表示されるように見える。2015年の製品化を予定している。
HUDは、フロントガラスなどに、自車の走行速度やカーナビゲーションシステム(カーナビ)の情報を表示するシステムである。運転時のドライバーの視線移動を減らせるので、交通事故の発生を抑えられる技術として期待されている。少し前までは、高級車のオプションとして利用されている程度に過ぎなかったが、現在は「プリウス」クラスの車両にも装備されるようになっている。パイオニアが2012年7月から、HUDユニット付きのカーナビの販売を始めたことも記憶に新しいところだ。
デンソーが新たに開発したHUDは、車両情報を表示するだけでなく、カーナビや各種センサーと連動した情報を、ドライバーから見える風景に違和感なく表示を重ね合わせる機能を備えている。例えば、カーナビと画像センサーの連携によって、高速道路などで走行すべき車線を指示する「レーンガイダンス」や、ミリ波レーダーや画像センサーが検知した車両前方の歩行者の存在を知らせる警告サインなどである。
さらに、各種表示の位置や色調などは、ドライバーの運転を妨げないように配慮されている。直射日光がフロントガラスに入る場合でも視認性を確保できるように、元画像を表示する液晶ディスプレイの輝度を従来品比で約2倍に高めたという。
なおデンソーは、「第19回ITS世界会議ウィーン2012」(2012年10月22〜26日、オーストリア・ウィーン市)で、このHUDを展示する予定だ。
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