これは楽しい! “ず太い”加速──新型「デミオ」に乗って分かった好調の理由動画で解説、小型車×ディーゼルの意識が変わる(2/4 ページ)

» 2014年10月16日 08時00分 公開
[八百山ゆーすけBusiness Media 誠]

コンパクトカーの意識が変わる、魅力あるデザインと新クリーンディーゼルエンジン

 スタイリングは、CX-5以降のモデルで一貫する「魂動」デザインだ。伸びやかなロングノーズ、躍動感があふれるサイドビュー、ボリュームのあるリヤビューなど、共通のデザインテーマを用いることで、一目でマツダのクルマだと分かる個性をこの新型デミオも持っている。

(音声あり)新型「デミオ」の外観を動画でチェック

photo ボリュームのあるリアビュー(マツダ公式 Pinterestフォトギャラリーより)
photo サイドビューも車格以上の迫力を感じるデザインだ(マツダ公式 Pinterestフォトギャラリーより)

 「チーターが駆ける姿」を見立てたサイドビューは、最近のマツダ車の魂動デザインが共通して表現するものだ。アテンザがそのトップスピードを、アクセラが強い加速感を表しているのに対して、コンパクトなデミオは「溜めたエネルギーを開放する/踏み出す“直前”」のチーターの姿を表現した。リア部分のボリュームあるスタイルが特に魅力を感じる部分だ。

photo コンパクト車の新型デミオにも「魂動デザイン」を取り入れた

 もう1つ、新型デミオの大きな魅力は「SKYACTIV-D」と呼ぶクリーンディーゼルエンジンをはじめて採用したことだ。新型デミオは、1.3Lのガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.3」に加え、「SKYACTIV-D 1.5」という新開発の1.5Lクリーンディーゼルエンジン搭載モデルも用意する(2014年10月23日発売)。おそらく、このSKYATIV-D搭載車に乗ると「1.5Lクラスのクルマとは思えない」の驚きが倍増するはずだ。

 マツダのクリーンディーゼルエンジンは、これまで「SKYACTIV-D 2.2」という2.2Lユニットとして、少し大型のCX-5やアテンザ、アクセラに採用していた。パワー感(トルクの太さ)や燃費効率のよさといった、ディーゼルエンジンの強みが生かされ「想像以上にいい」と評判である。新型デミオは、こうしたディーゼルエンジンの特徴に磨きをかけ、これまでは難しかったエンジンの小型化を図り、1.5Lのユニットを開発した。例えると、SKYACTIV-D 1.5は「2.5Lクラスのガソリンエンジン車並みのトルク」を低回転で発生しながら、「ハイブリッド車に匹敵する燃費のよさを実現する」のがポイントという。

photo SKYACTIV-D 1.5は、最大トルク(250N・m/25.5kgf・m)を1500〜2500rpmの低い回転域から発生する。ちなみにガソリンエンジンのSKYACTIV-G 1.3も燃費性能はよいが、最大トルクは121N・m/4000rpmである

 ただ、ディーゼルエンジンにマイナスイメージを持っている人もいるかもしれない。「うるさい」「(排気ガスが)汚い」「走らない」などだ。──もう違う。その考えはもはや過去のことだ。近年のクリーンディーゼルエンジンはそんな昔のイメージを完全に覆すほど、進化を遂げている。

 ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに対して街中で多用する低中回転域でのトルクが大きい特性がある。同等クラスであれば、踏めばグッと加速する度合いが強い。さらに燃料となる軽油もレギュラーガソリンより安い。そして最近、排気ガスを浄化する技術が大きく進化したのも大きい。燃料の軽油は、原油の採掘から輸送、精製し、そして燃料を使って走行するという一連の消費サイクルで換算すると、二酸化炭素の排出総量はガソリンエンジンより少ないという。燃費性能が同等なら、燃料費が安い分、実際の走行コストも安くなる。実は、環境にも、おサイフにも優しいエンジンということだ。日本ではまだ知名度が低いが、ヨーロッパの乗用車は、すでにガソリンエンジンよりクリーンディーゼルエンジンが主流となっているほどである。

 そんなマツダのクリーンディーゼル、そのポイントは「低圧縮比」にある。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンより空気を強く圧縮し、圧縮したことで熱くなった空気に軽油を噴射して自然着火させ、燃焼エネルギーを得て回転する仕組みだ。しかし、高く圧縮し、自然着火させるというこの仕組みは、不完全な燃焼が起きやすかった。燃え切らない不完全な部分がススなどとなって、黒煙の発生に結び付いていた。これを少なくとも大気へばらまいてしまわないよう、高価な排気ガス浄化装置を装着する。あるいは、膨張率を下げるなどの対策で出力効率をあえて下げていたりする。この課題を解消すべく、「SKYACTIV-D」では、排気ガスをクリーンにすべく、圧縮比を下げつつも燃焼タイミングを最適化して出力を無駄にしない工夫により、ディーゼルのネガティブな課題を解決したのだ。

photo SKYACTIV-D 1.5に取り入れた新技術
photo 従来のディーゼルエンジン(画像=左)に対する、SKYACTIV-D(画像=右)のメリット

 さらに圧縮比が低いならば、エンジンの物理的な強度なども適度でよい。それを受ける機械部分の肉厚を薄くできる。部品が軽くなり、フリクションロスが減る。結果として高回転までスムーズに回せる。「SKYACTIV-D」エンジンは、ディーゼルエンジンとして実用回転域(1500〜3000rpm)で最大となる太いトルクに加えて、ガソリンエンジンにさほど劣らない高回転域まで回せるようになった。このエンジン回転の“伸び”のよさは、SKYACTIV-D 1.5という小排気量のクリーンディーゼルエンジンでさらに際立つものとなっている。なぜなら、乗っていて楽しいと感じられるからだ。

photo ライフスタイルの変化や情勢に応じてなど、車格を変更する機会は多い。デミオは「クラス概念を打ち破る」をテーマに掲げ、「今まで乗っていたクルマと同様の安心感を感じられる」こと価値に掲げる。安心感とは、安全性や燃費、使い勝手などのほか、以前と同じ加速感、運転の楽しさ、使い勝手など、感覚的なことも含めた安心感を示すのだろう
(音声あり)新型デミオ開発担当主査の土井歩氏が説明する「新型デミオの狙いと開発意図」

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