JALの最新ビジネスクラス「SKY SUITE 777」を創った男たち――第2回「個室型フルフラットシート」秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/5 ページ)

» 2014年08月29日 08時45分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

発泡スチロールの模型を自分で製作

――横一列が“2-3-2”という配列は、必須だったのでしょうか? 最近は中央の3席並びを2席に減らした、“2-2-2”配列が主流になっていると思いますが。

藤島: “2-2-2”どころか、現在は“1-2-1”も出てきていますよね。ですが、どんなレイアウトでもニーズを満たすだけの席数は置かなければなりません。そこで考案されたのが、シートピッチ(座席の前後間隔)を詰めようと進行方向に対してシートを斜めに配置する「ヘリンボーン型」だったり、後部席の人の足が前の席のサイドテーブルの下にもぐり込むように前後で“互い違い”の形でレイアウトする「スタッガード型」も登場しました。

――どれもユニークですが、一長一短ありますよね。

藤島: スタッガード型も快適ですが、肩幅の部分にある程度のスペースを確保しようとすると、そのぶん足の周りが狭くなる。互い違いになっている関係で、その欠点は解消できません。私たちは、肩幅も足もとも同じ広さの長方形ブースを一人ひとりに確保することを目指したので、前の席との間隔をゆったりとらなければならない。必要な数を置くには、どうしても“2-3-2”の配列が必須だったわけです。

SKY SUITE 777のシートは“2-3-2”配列。個室型ブースを通路の分だけずらして配置し、どの席からも通路へのダイレクトアクセスを可能にした画期的なシートだ(提供:JAL)
座席横のコントローラーでシートポジションも自由自在だ(撮影:倉谷清文)

――それを実現するための策を図面上で探り、次のステップとしては、その図面をシートメーカーに渡して試作品の製作に取りかかってもらうわけですね。

藤島: 通常はそういう段取りを踏みますが、今回のプロジェクトではその間にもう1ステップありました。実際にどんなシートになるのか? 2次元の図面だけでは私自身も確信が持てなかったので、DIYショップで買い込んだ発砲スチロールなどを羽田の整備場に持ち込み、自分で実物大の模型を作ってみたんです。

――自分で作っちゃった?

藤島: ええ。それも1席だけでなく、窓側、通路側、中央と3つの種類を。どうしても3Dで見てみたかったものですから。整備場の人たちは「何やってるんだ?」という顔で見ていましたよ(笑)。シートメーカーに試作品を発注して、それが出来てくるのを待つ時間も惜しかったですしね。でも模型を作ってみたお陰で、スイッチ類とか小物入れ、通路の幅などの実データも得られました。

読書用LEDライトの位置なども模型をつくって決めたという(撮影:倉谷清文)

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