国内のオートバイ市場が復活の兆しをみせている。日本自動車工業会の二輪車市場動向調査によると、オートバイの2014年度国内需要台数予測は前年比6.1%増の約46万9000台規模。1997年の同約117万8000台と比べると半数ほど、近年は2009年度より約42万台規模まで落ち込んだが、景気回復やアクティブシニア層の需要増によって減少がようやく下げ止まり、増加に転じる明るい見通しを示した。
現在、この市場は主に50〜60代のアクティブシニア層が支えている。クルマと比べると趣味性の高いオートバイは、金銭面に余裕のある年齢層、特に若者時代にオートバイに親しんだ“リターンライダー”の需要が多くを占める。業界は若年層のオートバイ離れとこの層の人口減少、これと連動して現在の主要な利用者年齢である60代も減少に転じる可能性への懸念もあるが、手をこまねいているわけではない。自動二輪免許簡素化への活動や「3ない運動、方向転換の認知」などのほか、モノからライススタイルへ定着させるべく、中・大型バイクのラインアップと利用シーンの提案を“原点回帰”で取り組む訴求活動をオートバイメーカー自らが加速させている。
ヤマハ発動機が開始した「55mph」プロジェクトは、こんな「バイクファン獲得」のための取り組みの一環。ゆったりとバイクライフを──をテーマとするクルーザー型オートバイ「ボルト」を中心に、あこがれのガレージライフをテーマにPR活動をリアルイベント(ガレージカルチャーなど、オートバイのあるライフスタイル提案など)、カフェ、Webサイトで横断展開する。
提案イメージの1つに「ガレージライフ」を掲げた。男性層があこがれる「ガレージのある生活」をテーマに、往年の高級キャンピングカー「エアストリーム」(1968年製)を改装したキャラバン車を作成し、ボルト+ガレージ空間を伝えるオープンイベントを行う。著名ツーリングスポットの1つである神奈川県・大観山や、利用者の多い高速道路PA「清水NEOPASA」など、7月よりヤマハのカフェイベント、そして大型ショッピング施設などへ出張する。
オートバイ業界が活況だった1980〜1990年代と違い、現代はユーザーニーズ、そしてメーカーのビジネスも変化している。例えば「買う・所有する」は「体験する・使う・シェアする」など、「自慢できる」も「自分に合あえばよい」などに変化し、特にメーカーは「自分(利用者)に対するメリット」と「自分のライフスタイルとどうつながるか」を提案・訴求する方法に苦労している。
ヤマハが「55mph」プロジェクトで目指すのはこの点。「ブランドや商品の接触機会を増やし、間接的にもファンを醸成する」「オートバイのあるライススタイルを提案する」を積極的に、かつ長期で取り組み、ファンを育てていく方針で展開する。長期的に「あ、バイクっていいな」「こういう生活もいいよね」と感じてもらうよう促すのが狙いだ。
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