旅客機を安全かつ時刻表通りに送り出す「グラハンさん」JALの舞台裏(1/4 ページ)

» 2013年08月27日 07時00分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

 航空業界の専門用語の1つに「定時性」という言葉がある。やさしい言葉でいいかえれば、「時刻表どおりに飛ぶ」ということだ。電車が1分刻みのダイヤ運行を正確にこなすことに慣れた日本人にとっては当たり前の話と思われるかもしれない。

 だが、航空会社が「定時性100%」を目指すには、さまざまな「協力」が必要なのだ。航空会社のスタッフだけでなく、空港職員、地上スタッフ、そしてわれわれ利用者だ。今回は日本航空(JAL)の協力を得て、羽田空港で働くグランドハンドリングスタッフ、通称「グラハンさん」の定時性向上への取り組みを取材した。

地上スタッフ 出発直前、お辞儀をした3人のグラハンさん

そもそも「時刻表どおりに飛ぶ」とはどういうこと?

 航空会社にとってもっとも重視すべきことが安全性であることは間違いない。企業である以上売上や利益も重要だが、事故というリスクは最小限にしなければならない。では、その次に重視すべきものは何だろうか? そこに各航空会社の特色がみてとれる。

 きめ細かいサービス? 最新鋭の機体? 豪華な空港施設? あるいは低廉な価格? それぞれを得意とする航空会社がパッと浮かんでくる。このような航空会社間の熾烈な競争のなかで、JALは安全性の次に「定時性世界一」となることを選んだ。

 もちろんJALだって、日本人の美徳である「おもてなし」の心を感じられるサービスを充実させている(参考記事)。しかし、旅客運送は交通機関の1つ。フライトが遅れたせいで旅行や出張のスケジュールが狂うなんて、利用者にしてみれば目も当てられない。それゆえにJALは定時発着が利用者の安心につながると考えたのだ。

地上スタッフ

 ところで、時刻表に書かれている出発時間と到着時間は、どのタイミングを指すのだろうか? 出発時間は駐機場に止まっている飛行機の車輪にはめられた車輪止めが外され、機体が動き出した瞬間を指す。ブロックアウトタイムともいう。到着時間はこの逆で、駐機場に停止した機体に車輪止めがかまされた時間、ブロックインタイムだ。

 では、定時性はどうやって計測されるのか。世界中のフライトの出発・到着遅延情報を収集し、Web上で公開している第三者機関の米FlightStatsの評価指標によれば、「到着遅延が15分未満の便がオンタイム(定時)」として計上される。遅延なく到着するためには、遅延なく出発することが必要というわけだ。

 JALは、FlightStatsが毎年まとめている定時性アワードで「90.35%」(2012年、Major International Airlines)という数字を記録して世界ナンバーワンとなった。ちなみに同社が定時性向上に力を入れ始めた2009年と2010年にも1位を記録。2011年は全日本空輸(ANA)にその座を奪われたものの、1年での奪還となった。

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