G-SHOCKは今や、ハイエンドも、売れ筋もアナログが主力――斉藤慎司さんG-SHOCK 30TH INTERVIEW(2/4 ページ)

» 2013年06月26日 08時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
カシオ計算機 時計事業部 商品企画部 斉藤慎司氏。現在、G-SHOCK全モデルの商品企画を担当している

――「万が一、エマージェンシー状態になったときにも対応できるG-SHOCK」ということですか。

斉藤 ええ。パイロットって、乗客からは“飛行機を運転する人”に見えますが、実は実際の訓練ではほとんどの時間を「もし何かあったときにどう対応すればよいか」ということに費やしているんです。フライトアテンダントも同じですが。パイロットが飛行機の運転ができるのは当たり前で、それにプラスして「ほぼありえない状況」を想定して、万が一のときにどういう対応を取るのかという訓練を、彼らは繰り返しています。

 ほぼありえない状況……つまりサバイバル状態になったときにどうするか? というのを、実際に英国のロイヤル・エアフォースに協力いただいてパイロットに聞いてみたところ(参照記事)、「サバイバル状態になったときは、方位計を持っていると便利だよ」という話をされるんです。実際、小さいアナログ方位計を時計に付けているパイロットも多いんだ、という話を以前から聞いていて、ずっと温めていたんです。今回、方位計のセンサーが非常に小型化できたという技術的な進歩があったので(参考記事)「(SKY COCKPITで)方位計をやろう!」ということになったのです。

――方位計センサーというと、これまではPROTREKに搭載していましたよね。新型センサーはどれくらい小さくなったんですか?

斉藤 実際の基板を見ていただくと分かりやすいと思います(写真)。左は前のPROTREKの基板ですが、コイルとLSI、方位を測るにはこの2つの部品を使う必要があったんです。右がA1100の基板です。このちっちゃいLSIがありますよね? これ1つだけで方位が測れるようになったんです。

 弊社のアナログ時計は複数のモーターを積んでおり、時針、分針、秒針をそれぞれ独自に動かしています。ワールドタイムやストップウォッチといった機能も、独自に針を動かすこの機能を使って表現しているので、モーター類を置くところで、もう(基板が)いっぱいになっちゃってるんです。でも今回は(方位)センサーがすごく小型化されたので、空いたスペースに入れられて、前からやりたかった機能、エマージェンシー状態で使える方位計を入れられたんです。

腕時計で方位を測るためには、左のPROTREKの基板ではコイルとLSIの2つの部品が必要だったのが、右のA1100では大幅に小型化された新しいセンサーを採用し、小さな部品一つになった(左)。新しいセンサーは、95%の小型化と90%の省電力化を果たしている(右)

――なるほど。方位計のほか、A1100と、SKY COCKPITの前のモデルである「A1000」との違いはどこですか?

斉藤 A1000よりもワイドフェイスに、ややワイルドというか、ゴツめのデザインにしました。機能が増えてもサイズは変えていないのですが。それともう一つ、SKY COCKPITシリーズではこれまでもずっと「視認性の良さ」にこだわって来ました。パイロットの人がパッと腕を見て時間がすぐ分かることを重視しています。A1000シリーズでは、白い時字(ときじ)の部分に蓄光塗料を吹いて夜間でも見やすくする、といった工夫をしていました。今回A1100ではこれにプラスして、時計をぶつけたりした時に風防ガラスが傷ついてはいけないだろうということで、風防をサファイアガラスにしました。視認性に優れ、傷にも圧倒的に強いんですね。

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