第59鉄 「C61 20」復活、碓氷峠鉄道文化むら――青春18きっぷで行く機関車王国ぐんま杉山淳一の +R Style(4/5 ページ)

» 2013年04月04日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

 かつて横川駅と軽井沢駅の間は、国鉄で最も急勾配の区間だった。初めて電化された区間でもあり、歯車付きのレールを使った「アプト式」という機関車が使われた時期もある。その後は、横川駅に電車が到着すると、後部に後押し機関車を連結して、軽井沢駅まで上っていった。帰りは軽井沢駅で前部に機関車を連結し、強力なブレーキを使って峠を降りてきた。

 鉄道ファンにとって、横川−軽井沢間の補助機関車連結はお楽しみの1つだったけれど、長野新幹線の開業と同時に廃止された。その区間を記念して作られた施設が「碓氷峠鉄道文化むら」というわけだ。碓氷峠や関東で活躍した車両など30両以上が展示され、大宮の鉄道博物館に匹敵する車両数だ。

「碓氷峠鉄道文化むら」の名物、体験運転用のEF63形機関車とトロッコ列車

廃線跡のトロッコ列車に乗ってみた

 アトラクションとしては、碓氷峠の廃線跡を走る「トロッコ列車シェルパ君」と、園内外周を走る「あぷと君」に乗れる。トロッコ列車のきっぷは入場券と同時に買うか、乗車前に車掌さんから買う仕組み。入場時に「トロッコに乗ります」と言おう。入園券とトロッコ列車往復のセット料金は、中学生以上で1000円、小学生は600円。

 大人の鉄道ファンには、本物のEF63形機関車を運転体験できるというメニューもある。こちらは1回5000円。しかも3万円で1日講習を受けて、試験に合格する必要があるという、ディープなメニューだ。

 さっそく15時25分発のトロッコ列車に乗車した。横川と軽井沢を結んだ信越本線の下り線跡を進んでいく。「とうげのゆ」駅まで約2.6キロメートルのコースだが、さらに先の熊の平まで延伸させる計画もあるというから楽しみだ。できることなら軽井沢まで伸ばして、鉄道だけでしなの鉄道に乗り継げるといいなあ、と思う。計画はあったらしいのだけれど。

トロッコ列車を牽引するディーゼル機関車。この区間の保線車両だった

 トロッコ列車はディーゼル機関車と客車2両。機関車は実際にこの区間で保線用に使われていたそうで、これも保存車両の1つ。客車は先頭が吹きさらしの展望車。機関車側が冷房車。常に機関車が勾配の下側についていて、行きは機関車が客車を押していく。つまり展望車から進行方向のパノラマが楽しめる。

トロッコ列車からの眺め。丸山変電所の建物が見えた
機関車側の眺めも悪くない。保存車両をエリアを通過

 アプト線の跡は線路が撤去されて「アプトの道」という遊歩道になっており、現在はトロッコ列車の駅よりもさらに先、熊ノ平まで伸びている。時間があって気候のいい時期なら、遊歩道を散歩するのもよさそうだ。

遊覧列車「あぷと君」

 トロッコ列車の次は遊覧列車「あぷと君」に乗ろう。駅は園内の奥にあり、そこまで歩きつつ保存車両群を眺める。D51蒸気機関車の「なめくじ形」や、私にとっては懐かしいブルートレイン牽引機EF65の500番台、関門トンネルで活躍したステンレス車体のEF30、デッキ付きの茶色い電気機関車がある。お座敷客車は休憩所として車内に入れる。私にとっては初めてのお座敷客車体験だった。

保存車両の一つ「D51 96」。ボイラー上部の形状から「なめくじ」というあだ名が付いている

 「あぷと君」は入場料金とは別で400円。蒸気機関車とディーゼル機関車が交代で運行する。園内外周を見渡し、保存車両群を俯瞰できる。蒸気機関車がいいなと思ったけれど、残念ながらディーゼル機関車の牽引だった。でも、よく見ると車輪の動力伝達はSLのようなロッド式になっている。なかなか可愛い奴だった。

園内を一周する列車は、新造の蒸気機関車が牽引する
が、のんびり走るのでミニSLに追い越される(笑)

 「あぷと君」を降りたら閉園時刻が近づいていた。うむむ。駆け足で資料館を観たけれど、もうすこし時間が欲しかった。SL列車との日帰りは充実しているけれど、家族や仲間と遊びに行くなら、水上で温泉に一泊したほうが楽しめるかもしれない。

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