渋滞は、ほぼすべてのドライバーが嫌がるものだろう。心理的にイライラするだけでなく、目的地への到達時間の遅れ、燃費の悪化、CO2排出量の増加、追突事故発生の要因にもなる。
走行する周囲のクルマの動きと同調する運転が実現できれば、渋滞の発生を抑制でき、燃費も改善することが分かった。本田技研工業は3月21日、クルマの加速や減速といった走行パターンから渋滞発生につながる予兆を検知する技術を使った公道実証実験の結果を発表した。
ホンダは、1台のクルマの加減速走行が後方車の走行に影響して渋滞発生の原因になることに着目。東京大学先端科学技術研究センターの協力を得て、2012年4月に渋滞予兆検知技術を開発した。
この技術は、発生した渋滞情報を基に回避ルートを提供するものではなく、1台のクルマの挙動をモニターし、それが渋滞につながりそうだと判断すると車載搭載端末の画面の色を変化させて、ドライバーになめらかな走行(周囲と同調したゆるやかな減速)を促すもの。その結果、渋滞の発生を未然に防ぐことを狙っている。
今回、ホンダはインドネシアのジャカルタにある高速道路で実験を行った(実験期間は2012年9月〜2013年2月)。周囲のクルマとの同調走行ができているかどうかを、スマートフォンの画面の色の変化でドライバーに伝えるアプリを開発。1台のクルマに搭載したスマートフォン単体で渋滞につながる走行を判断する「単体型」と、複数のクルマからのデータをクラウド上で連携させ、クルマの動きとその前方車両の情報も考慮する「通信型」の2つを試した。
実験を行った高速道路では、3分間の交通量が200台以上になると平均車速が急激に下がり渋滞が始まる。この状況で渋滞抑制システムを搭載したクルマを投入すると平均車速が上がり、渋滞を最小限に抑制できたという。
システムによって渋滞発生を遅らせた時間(渋滞発生遅延時間)は、単体型で平均3分、最大6分、連携型で平均4分、最大6分という結果に。また、渋滞の原因となる急激な車速の変化も、単体型で6割程、連携型で7割程度緩やかになった。燃費は、それぞれ20%、22%の向上を確認した。
同社では、周囲の車両と同調した走行を行うことで、渋滞を抑制できるだけでなく、安全性も向上し、自車だけでなく周囲の数百台の車両の燃費も向上させる効果が期待できると分析。今後は、実際の交通流量や走行パターンを基にして、渋滞が発生する可能性がある地点の情報を車両端末に表示する機能や、二輪車への応用を目指して音や振動で支援する機能の開発を進めるという。
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