飛行中の機体の向きは、どう変える?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)

» 2012年12月27日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

ヒコーキ雲はなぜできる?

 アメリカの東海岸で以前、思わぬ光景に遭遇した経験がある。街を歩いていたら、はるか前方に突然、数機の小型機が現れた。小型機は編隊飛行を繰り広げ、澄み切った青空にポツン、ポツンと白い点を残していく。上空に描かれたのは、ある企業の50周年を祝う記念の文字だった。

 これは「スカイタイピング(Sky-typing)」といって、小型機を使ってドット(点)状のヒコーキ雲を人工的に発生させ、大空をキャンバスに文字を“タイプ”していくもの。企業のコマーシャルやオリンピックの開会式などで活躍し、その後は日本の空でも見かけるようになった。

 ところで、フライト中の旅客機の窓から外を見ていると、青い空に1本の白い真っ直ぐな線を描きながら飛行していく機体を発見することがある。白い雲の線を引いて飛ぶ旅客機と、何も出さずに飛んでいる旅客機があるのは、どうしてなのだろうか?

飛行機と空と旅 青い空に1本の白い真っ直ぐな線を引いているヒミツは?

 冬の寒い朝などに息を吐くと、白くなる。ヒコーキ雲ができる原理は、あれと同じだ。例えば上空に絹雲が発生しているようなときに、ヒコーキ雲はできやすい。

 絹雲というのはいわば“氷の雲”で、氷点下10度以下の大気中に浮び、気層はすでに飽和している。その中をジェット旅客機が進むと、エンジンの排気中の水分が固まって、濃密なヒコーキ雲になるわけだ。ヒコーキ雲は間もなく消えてしまうことが多いが、長いときには1時間以上も続いて見えることもある。前にテレビのお天気キャスターが、ヒコーキ雲から翌日の天気を予測できると次のように話していた。

「ヒコーキ雲が見えるのは、上空に水蒸気が増えている証拠です。ということは、翌日は雲の多い天気になる可能性が高い。また同じヒコーキ雲でも、真っ直ぐな線ではなく、波のようにうねって見えるときがありますね。これは上空を強い風が吹いているためで、急速に天気が変わる可能性を示唆しています」

 なるほど、知っておくと役に立ちそうな知識である。

飛行機と空と旅 エンジンの排気中の水分が固まって濃密なヒコーキ雲に(撮影:チャーリィ古庄)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.