米国でG-SHOCKブームを仕掛けた男、その4つの視点――伊東重典氏G-SHOCK 30TH INTERVIEW(3/4 ページ)

» 2012年11月21日 23時20分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

――なるほど。3つ目のパブリシティですが、G-SHOCKはユニークなパブリシティをしていますよね。ストリートスポーツの選手やミュージシャンに「アンバサダー」という形で契約したり。今回取材している「SHOCK THE WORLD」という企画もかなり独創的です。

伊東 「パブリシティこそがブランドをつくる」と、昔から思っていました。それだけに、G-SHOCKのパブリシティには本当に力を入れています。そもそもG-SHOCKの打ち出し方として、僕は2つの要素を言い続けていました。それは「ファッション性」と「テクノロジーに裏付けられたタフネス」です。単なるファッションウォッチじゃなくて、テクノロジーもある。そこが他の時計と違う。

 米国人にはタフネスはうけるんですよ。軍人や消防士といった人たちの地位がとても高いですから、彼らが「実用的だ」といってG-SHOCKを選んでくれたというのがまず出発点としてあった。

今年、G-SHOCKのアンバサダーとなった國保和宏さん。「GDF100」を着けていることが多いそう

 そしてファッション性。カニエ・ウェストは本当にG-SHOCKについてこちらがびっくりするくらい詳しいですし、25周年のイベントに出てほしいとお願いしたときは二つ返事で引き受けてくれました。エミネムもそうですね。ジャスティン・ビーバーも、自前のG-SHOCKを着けてくれてます。あれは私たちが提供したものじゃないんです。

 G-SHOCKのアンバサダーとして、ミュージシャンやスポーツ選手と契約する場合のこだわりは2つあります。1つはそのジャンルの「トップ」であること。プロのスノーボーダーとか、スケーターとか、その分野のトップの人にお声がけしています。今年は、もと日本のオリンピック代表で、現在は米国で活躍している國保和宏選手にもアンバサダーになっていただきました。

 もう1つは、その人がG-SHOCKを好きであること。好きじゃない人に「お金を出すから、G-SHOCKを使ってください」と言ったことは、一度もないんですよ。

――「SHOCK THE WORLD」もかなり独自性のあるイベントですよね。

伊東 SHOCK THE WORLDは、1年目が一番大変でしたね。カシオは日本の会社ですけど、でも米国から発信しなきゃダメだ、ということで、G-SHOCK25周年のときに「SHOCK THE WORLD from USA」として開催したのが最初です。このイベントをやったことで、社員に「自分たちはできるんだ」という自信がついたことがなにより大きかった。取材に来てくれるメディアの数も増えています。25周年のときは280くらいでしたが、今回は900ものメディアが取材している。それだけ注目度が上がっているということですし、アジアやヨーロッパ、南米と、ほとんど全世界からG-SHOCKに興味を持って取材に来てくれるということが、すごくうれしい。

G-SHOCKの世界観を伝えるイベント「SHOCK THE WORLD」。米国からスタートし、世界のさまざまな都市で行われる。今年は1時間以上にわたるエミネムのスペシャルライブで幕を閉じた

 →「SHOCK THE WORLD 2012」レポート「SHOCK THE WORLD 2009」レポート

――4つめに価格とおっしゃいました。

伊東 これは1つ目の流通と関係しています。49ドルから始まって、99ドル、150ドル、190ドル……とG-SHOCKはだんだん値段が上がってきた。もちろん、安価で買いやすいモデルも今もありますけどね。でも、流通、売られている場所に見合う価格というものがある。「高くても売れるG-SHOCK」を僕は目指しているんです。

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