JINS PCを世に問うた社長が目指す、メガネの常識を変えるイノベーションとは?(1/6 ページ)

» 2012年11月19日 11時00分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

 ノートPCやスマートフォンなどで使われている液晶ディスプレイは、近年バックライトにLEDを使うものが主流になっている。そして、そこからは最近話題になっている「ブルーライト」が多く発生している。医学的にもブルーライトが人体に与える悪影響の研究が進んでおり、眼精疲労や睡眠障害の原因とされている。

 2011年9月に発売されたPC作業用メガネ「JINS PC」は、このブルーライトをカットする機能を打ち出した製品。発売以来、およそ1年で90万本(2012年11月14日時点)を売り上げた。そこで今回は、アイウエアショップ「JINS」を率いるジェイアイエヌの田中仁社長に話を聞いた。

JINS PCはメガネの世界の新たな扉を開いた

――筆者の周りでもJINS PCを装用している人が増えてきています。メガネ業界において、1種類のメガネの累計販売90万本という数字はどのような意味を持つのでしょうか?

田中仁 田中仁(たなかひとし)/1963年、群馬県生まれ。1981年から前橋信用金庫(現・しののめ信用金庫)に勤務。1988年にジェイアイエヌを設立。2001年に「JINS」チェーンを興してメガネ業界へ参入し、2006年、ヘラクレス(現JASDAQ)市場に上場。

田中 非常に大きなインパクトがあったと思います。これまでメガネには、「視力の悪い人がするものだ」という認識があったのではないでしょうか。これをJINS PCは変えようとしています。

 例えばレーシックをしてメガネが必要なくなった人、あるいはメガネが嫌いでコンタクトレンズを装用している人。こういった人たちに「メガネは視力矯正だけではなく『目を守るアイテム』として、これからの新常識となるよ」という世界の扉を開いたと思うんです。

――JINS PCは御社の機能性アイウエアの中で「PROTECT」シリーズに属していたと思います。

田中 いまは「ブルーライト」対策にフォーカスしてJINS PCを展開していますが、実は紫外線対策も同じ考えが必要なんです。若いときには関係なく太陽光をたっぷりと浴びていますけれども、紫外線を浴びた量の蓄積によって白内障になるというのは、医学界では常識だそうです。例えば、海の男たちは白内障が多いという統計データがあるそうです。

 国内で白内障患者がどんどん増えています。その原因としてはオゾン層の破壊などで紫外線の量が昔よりも増えていることも1つだといわれています。だから、紫外線からも目を守らなくてはならない。実はJINS PCでは紫外線を99%以上カットしています。

――紫外線カットの必要性は分かりました。では、ブルーライトのカットは本当に必要なのでしょうか?

田中 JINSと産学共同で研究をしている慶應義塾大学医学部でマウスを使った実験をしました。LED照明の下に、「透明のケージ」「UV400カットのケージ」「UV400+ブルーライトカットのケージ」を置いて、その3つのケージで飼育しているマウスの網膜を調べたところ、やはりブルーライトをカットしているマウスの網膜が一番守られていました。

 3つ目のケージはまさしくJINS PCです。この実験結果から、眼の網膜を守るためには、UV400をカットするだけでなくブルーライトのカットも必要だということが分かったのです。

 確かに「JINSが何か適当なものを作りだしているのではないか」という人もいらっしゃる。だからこそ明らかなエビデンス(証拠)を出していくことが重要です。JINS PC以降、さまざまなブルーライトカットメガネが登場していますが、中には素性がよく分からないものもある。JINS PC開発の段階からエビデンスにこだわっていて本当に良かった(笑)。

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