旅客機にもカミナリは落ちる?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)

» 2012年10月26日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]
前のページへ 1|2|3|4       

窓から見える“虹の輪”の正体は?

 食事が終わり、あとはシートでゆっくりくつろぐ。座席に設置された個人モニターで映画を楽しんだり、ときどき窓のシェードを上げて外を眺めたり。窓から見えるのは雲と海ばかりという日が多いが、ごくまれに不思議な光景に遭遇することがある。客室乗務員として国内外の空を飛びつづける知人からも先日、こんなメールが届いた。

「飛行機の窓の外に真ん丸い“虹の輪”が見えて、お客さまに聞かれることも何回かありました。あれは何なんだろう、って。虹が丸いのも驚きなのですが、その輪の中に飛行機の影が小さく映り、私たちといっしょに同じ速度で移動しています。いつも思うのですが、とても神秘的な光景です」

 この“虹の輪”──飛行機を利用することの多い人なら、一度か二度はご覧になっているかもしれない。私もメールを読んで、ずっと以前にキャビンの窓から写真に撮ったことを思い出し、古いファイルの中から引っ張り出してみた。薄い“虹の輪”の中に、飛行機の影が映っているのが分かるだろう。さて、この不思議な現象の正体は?

飛行機と空と旅 虹の輪の中に飛行機の影が映り、同じ速度で移動している

 これは、いわゆる「ブロッケン現象」と呼ばれるもの。飛行機に太陽の光が当たると、その光が機体を回り込んで反対側に進んで雲のスクリーンに影を映し出す。山頂などでもよく見られる現象で、太陽を背にして立ったときに、自分の影が前方の雲や霧に浮かび上がることがある。周囲に色のついた光の輪が出現するのは、空気中の水滴によって光が屈折するからだ。

 ところで、メールをくれた知人によると、国内線での乗務で“虹の輪”に遭遇するのは瀬戸内海の上空あたりが多かったとのこと。そして客室乗務員の間では「“虹の輪”に出会うと幸せになれる」という噂があるそうだ。

 ちなみに“虹の輪”が見えるのは、太陽が出ているのとは反対側の窓側席。また、雲に映し出される飛行機の影を見るわけだから、太陽が真上にあるときにはなかなか遭遇できない。時間帯は、朝や夕方の太陽が傾いている時間がベストだ。次のフライトの際には、みなさんも目を凝らして探してみてはいかがだろうか。

著者プロフィール:秋本俊二

著者近影 著者近影(米国シアトル・ボーイング社にて)

 作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。

 著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。

 Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.