旅客機にもカミナリは落ちる?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)

» 2012年10月26日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

座席のテーブルは傾いているって、ホント?

 離陸して1時間が経過し、水平飛行に移ると、キャビンでは食事のサービスが始まった。水平飛行とは、翼に生じる揚力(上へ引っ張る力)と機体にかかる重力(下へ引っ張る力)が釣り合っている状態である。しかし巡航高度に達して水平飛行に移っても、そのときの角度は厳密には「0度」ではない。

 最新の旅客機にはFMS(フライトマネジメントシステム)というコンピュータシステムが搭載され、その日のフライトに最適な「経済速度」がコンピュータで算出される。推力レバーもその速度で飛ぶよう自動でコントロールされるが、推進力が絞られると前に進む力が弱くなり、そのままでは必要な揚力を維持できない。そこでFMCは、同じ飛行高度を保つために機首の角度を調整するよう制御コンピュータに指示。すると機体は、水平飛行とはいっても、機首をわずかに上に持ち上げた格好で飛行を続けていくことになる。

 このときの進行方向に対する機体の角度を「迎え角」、機首を上げたり下げたりして角度を変える操作を「ピッチ・コントロール」という。では、旅客機はどれくらいの「迎え角」で巡航飛行を続けるのだろうか?

飛行機と空と旅 巡航高度でも機首をわずかに上に持ち上げた形で飛行を続ける(撮影:チャーリィ古庄)

 旅客機は経済速度を維持するため、巡航高度でも通常2.5〜3度の迎え角で飛行を続ける。これが最も効率よく飛ぶときの旅客機の姿勢と考えていいだろう。ちなみに、離陸して上昇していくときの迎え角は、国際線では15度程度。それに比べると3度というのはごく小さく、その程度の傾きにはまったく気づかない人もいる。

 しかし感覚の鋭い人なら、化粧室に立ったときなどに多少の違和感を覚えるかもしれない。水平飛行中に通路を歩いてみると、前方へは上り坂のように、その反対は下り坂のように感じるはずだ。

 さて、上空でのミールサービスの話に戻ろう。3度も傾いていると、そのぶん座席のテーブルに置いた飲み物などもこぼれやすいのでは? そんなふうに心配する人もいるだろうが、大丈夫。どのエアラインも新しい旅客機を導入するときには、座席のテーブルもあらかじめ3度ほど前下がりに傾斜をつけて設置している。次のフライトで、ぜひ観察してみてほしい。じゃあ、地上ではどうなのか? それも心配ない。巡航高度での飛行に移らないと、テーブルを引き出すことはまずないのだから。いや、でも一つだけ──地上でのウェルカムドリンクの際には、前にこぼさないよう少しだけ注意が必要かも。

飛行機と空と旅 座席のテーブルは3度ほど前下がりに傾斜がついている(撮影:チャーリィ古庄)

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