ユニークな割引制度から見る、映画業界の“今”映画ウラ事情

» 2012年10月04日 13時58分 公開
[クランクイン!]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

総合エンタメサイト「クランクイン!」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、クランクイン!より転載しています)。


 ファーストデー、レディースデー、レイトショー割引、夫婦50割引など、一般化した映画料金割引制度がある。だが、これら以外にも『ゴッド・ブレス・アメリカ』では、男女がチケット売り場で「中年男&女の子割引で」と申告すると入場料金が1人1000円になる自己申告割引、『ヅラ刑事』では窓口でかつらを外した人を無料にするカミングアウト割引、『宇宙人ポール』では3人以上で来場し、そのうち1人が宇宙人であれば料金が1人1000円になる宇宙人サービスなど、ユニークな割引が登場している。

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 こういった割引制度について、関係者はこう話してくれた。

「もちろん、これは宣伝の一環です。公開規模の大きな作品は宣伝費が多いため、スポットを打ち、タイアップで雑誌の表紙を飾り、ジャパンプレミアなどを開きと、大々的に宣伝活動を行えます。その一方、公開規模の小さい作品は宣伝費も限られているため、なかなか思うようにいきません。出演者でイベントをやっても、これから期待の若手俳優が多く、マスコミが集まらなかったり……。そんなとき、変わった割引を行えば話題になるので、新聞記事やインターネット、上手くいけば新聞記事のネタを紹介するワイドショーで取り上げられることも。劇場鑑賞券が1000円になっても、劇場に人が来ないよりはいいので、いい宣伝手法ではないでしょうか」

 ただ……と、その関係者は付け加える。

「どの作品でも、その割引手法が使えるかというと、そうではありません。やはり、個性が突出している作品ですよね。そして、それを面白いと感じ、やってくれそうな人がいる映画。となると、B級作品、祭りのノリで楽しめ、一体感が味わえるような作品、コメディ映画などでしょうか。もちろん、変わった割引のどれもが成功するわけではなく、成功しないことのほうが多い。また、そういった割引が続けば、それもマンネリ化してしまいます。でも、今はまだ飽和していませんから、今後も面白い割引制度が出てくると思いますよ」

 このように、配給会社がしかける宣伝の意味合いが強い割引制度がある半面、近畿日本鉄道グループの「きんえい」が運営する映画館で始まった割引サービスは、500円を支払って会員になると、平日の大人料金が1000円になるというもの。

 観客にとってはうれしい割引だが、同社運営の映画館の近辺でシネコン開業が相次ぎ、来場数減少に直面しているとのこと。そう、ここまでしなければ、来場者数減少に歯止めがかからないのだろう。ユニークだけでは済まされない映画業界の現実が、割引から見てとれるのである。

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