劇場版タイバニがより面白くなる!? 「TIGER & BUNNY」のこれまでを振り返る映画ウラ事情

» 2012年09月20日 08時00分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


 2011年4月から9月までMBSで放送された深夜アニメ『TIGER & BUNNY(以下、タイバニ)』の映画『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』が9月22日に公開される。それを記念し、今回は「タイバニ」のこれまでを振り返っていきたい。

ハリウッドチャンネル 「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」(C)SUNRISE/T&B MOVIE PARTNERS

 架空の大都市シュテルンビルトを舞台に、バンダイや牛角、SoftBank、Amazonなど、実在する17社の企業ロゴが入った“NEXT”と呼ばれる8人のヒーローが、特殊能力を駆使して犯罪者から街を守る姿を描くと同時に、ヒーローの日常や裏側をコミカルにつづったタイバニ。制作は「機動戦士ガンダム」シリーズで有名なサンライズが手がけ、キャラクター原案・ヒーローデザインに「ウイングマン」の桂正和、監督は「鴉-KARASU-」のさとうけいいち、シリーズ構成は実写版「怪物くん」の脚本を担当した西田征史という豪華な布陣となった。

 このアニメ版タイバニが特異だったのが、地上波放送と同時にUstream配信を行ったことだ。それにより、実質タイバニは全国で視聴可能となり、その面白さは急速に広がっていった。それを裏付けるのが、視聴率と視聴者数の関係性である。同作の1話目の視聴率は2%、その後も2%前後で推移しつつ、最終回で3.8%だったのに対し、Ustreamの視聴者数は初回で2955人だったのが、2話目で7902人、10話目で5万人を突破、最終回は9万3490人にも上ったのだ。

 さらに、仕事帰りのサラリーマンをターゲットにした作品だったのに、ふたを開けてみれば、20〜30代の女性にも大ウケ。「ヒーロー握手会」に女性が殺到するだけでなく、フィギュアの購入層は9割が男性といわれる市場のなか、タイバニは6〜8割が女性で、主人公のフィギュアに至っては10万本を越えるヒットとなっているのだ。女性がタイバニにハマる理由の1つとして、タイプの違うイケメンヒーローがそろっており、まるで実在するアイドルグループのようにそれぞれ“キャラ立ち”が明確になっている。

 また、タイバニのBlu-rayとDVDの売上は累計で35万本を出荷し、アニメと同じキャストが演じる舞台『TIGER & BUNNY THE LIVE』のチケットは即日完売、アニメ最終回に合わせて映画館で行われた上映イベントには申し込みが殺到し、なんとチケットは150倍もの倍率に。

 こういった数々の記録を打ち出してきたタイバニだが、忘れてはならないのが、ヒーローのボディに実在の企業が広告としてロゴを載せる“キャラクターブレイスメント”と呼ばれる広告手法だ。これは、制作資金回収の一端を担うと同時に、ロゴを載せた協賛企業が独自にキャンペーンを行い、タイバニの知名度向上に一役買った。

「このキャラクターブレイスメントをほかの作品で取り入れるのは難しいと思います。ヒーローという設定だからこそ企業側の許容範囲が広くなり、キャラクターも無茶ができた。新たな収入源としては魅力ですが、実際にやれたところで『タイバニ』の二番煎じと言われるのがオチで、企業の腰も重いでしょうね。ヒットしている作品に便乗するほうが簡単ですから」と話してくれた関係者は、「面白いことができた『タイバニ』が羨ましい」とのホンネもチラリ。

 このように、何かにつけて話題のTIGER & BUNNY。今からでも遅くはない、この話題に乗っかってみてはいかがだろうか。

映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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