明暗くっきりの夏休み映画、隠れヒット候補作はどれだ?映画ウラ事情

» 2012年08月22日 12時44分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


 夏休み映画もそろそろ終盤戦。興収50億円を越えた『BRAVE HEARTS 海猿』を筆頭に、興収20億円を越える『おおかみこどもの雨と雪』『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ キュレムVS聖剣士 ケルディオ』など、絶好調の作品がある一方、話題にはなったものの早々に興行成績ランキングから姿を消したファミリー系作品や、出足でつまずいてしまった大作など、明暗がくっきりと分かれる形となった。

ハリウッドチャンネル ターゲットを明確にした個性的な作品とは?(C)2011 Joe’s Daughter Inc.All Rights Reserved (C)2011 The Grey Film Holdings, LLC.

 とはいえ、興行成績ランキングに登場するほど稼いではいないが、ヒットしている作品(ヒットが期待できる作品)もあるのだ。そんな“隠れヒット作”を業界関係者に聞いてみた。まず挙がってきたのが、意外なことに、ホラー映画『怪談新耳袋 異形』だった。

「井口昇監督がアイドルグループのスマイレージを主演に迎えたホラー・オムニバスということで、スマイレージファン、井口昇ファン、新耳袋ファンと、3つのファン層を取り込めている。さらに、本編を観た限り、製作費もそれほどかかっていないでしょうから、確実に回収できると思います。ただ、作品自体がどこにも振り切ることができず、中途半端な印象を受けたので、口コミは期待できないというリスクはあるでしょうが……」

 次に挙がったのが『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』で長編映画監督デビューを果たした女優サラ・ポーリーの監督2作目『テイク・ディス・ワルツ』である。

「夏休みは子どもやファミリー向けの映画、ハリウッド大作が主流になるため、どうしても女性向けのタイトルが少なくなってしまいます。そんななか、『テイク・ディス〜』は女性から圧倒的支持を集めているサラ・ポーリーが送るラブストーリー。当然、女性からの良い評判を耳にします。特に既婚女性の共感度は高いようです」

 そして、最後に挙がったのが、リドリー・スコットとトニー・スコットが製作を務めたリーアム・ニーソン主演のサバイバル・アクション『THE GREY 凍える太陽』だ。

「渋いアクション俳優として男性ファンが増えてきたリーアム・ニーソン主演に加え、男性ファンの多いスコット兄弟製作。さらに、劇中にメインで登場してくるキャラクターが石油採掘現場に勤務する男たちと、なんとも男臭い。そこに雪山での究極のサバイバルが加わるわけです。男性にウケなくてどうする、といった作品ですよね。逆に、女性には厳しいですが……」

 大作の影に隠れ、話題に上ることも少ないが、ターゲットを明確にした個性的な作品たち。大ヒットまでとはいかずとも、小ヒットぐらいで黒字になってほしいものだ。

映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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