日本人初の快挙! 8000メートル峰14座登頂・竹内洋岳氏インタビュー(1/4 ページ)

» 2012年08月03日 11時45分 公開
[岡本紳吾,Business Media 誠]

 世界には8000メートル超の山が14座ある。8000メートル――それはデッドゾーンと呼ばれ、酸素と気圧が平地の3分の1、気温は平均マイナス35度という人間が生きることができない世界だ。14座すべてに登った人は、世界にも28人しかいなかった。

 5月26日、日本人で初めて8000メートル峰14座全ての登頂に成功したのが、登山家の竹内洋岳(たけうち ひろたか)氏、41歳。8167メートルのダウラギリ登頂に成功し、世界で29人目の快挙を成し遂げた。

 竹内氏は、カシオ計算機と提携し、アウトドアウォッチ「PROTREK(プロトレック)」の製品開発に協力している(参照記事)。今回は同社のご厚意で竹内氏にインタビューする機会を得た。8000メートルという高所登山をこなす竹内氏とはどんな人物なのか? インタビュアーは、山岳ポータルYAMAAN!(ヤマーン!)を主催する岡本紳吾氏(編集部)。

高度8000メートルの世界

 本題に入る前に、8000メートル登山について、少し説明しておきたい。

 ご存じのように、空気の濃さというのは標高に比例して薄くなっていく。皆さんにもなじみのある富士山の山頂(3774メートル)では、0メートルの約70%の薄さとなる。人によっては3000メートル付近から、酸素が薄いことによる高山病を発症する。

 経度の高山病は頭痛や吐き気などであるが、これが重度になると肺水腫などを引き起こし、最悪の場合は死に至る。このため、7000メートルを超える登山の場合は酸素ボンベを使うことがある。しかし最近の超高所登山においては、酸素ボンベを用いない方法(無酸素と呼ばれる)が主流となっている。

 竹内氏の8000メートル峰の登山歴のうち、8000メートル峰の登頂に成功した日時は古い順に並べると以下の通り。14座登頂達成に、実に17年を要していることが分かる。

竹内氏が登頂した8000メートル14座。ナンガ・パルパッド以降は無酸素での登頂

ダウラギリ登頂中、ブログで現在地を更新

登山の位置情報更新に使われたSPOT本体。日本国内で使用すると電波法に抵触する可能性があるため、取材時には電池を抜いてあった

――今回の登山ではブログで現在地を随時更新されていましたね。

竹内: 更新にはSPOT(米国SpoLLCが開発、販売しているハンディGPS+衛星回線を利用したメッセンジャー)を利用した。この製品があるというのは知っていたが、出発前まで使うつもりはなかった。直前にはたと「面白いんじゃないか?」と思いついて使ってみた。

 SOSボタンを押すとSOSのメッセージを飛ばせるし、任意で設定したメッセージ(「登頂しました」など)を設定しておき、好きなタイミングで飛ばすこともできる。公式では6500メートルまでしか使えないが、8000メートルに持って行ってみた。地上ではそこそこ精度が高かったが、高所にいくと衛星の仰角が減るため位置の精度が落ちてしまうし、GoogleMapsの精度とのズレという問題もあった。試しに持って行ってみたつもりが、それがメインだという扱いになってしまった。

竹内氏のブログ。ダウラギリ登山中、SPOTを使って現在地を表示していた
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