今や映画よりもK-POP? 日本における韓国映画の現状を探る映画ウラ事情

» 2012年06月29日 08時00分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


 東方神起や少女時代、KANGTAやBoAといった人気アーティストが、ニューヨークのマディソン スクエア ガーデンの大舞台を踏むまでを追ったドキュメンタリー『I AM. SMTOWN LIVE WORLD TOUR IN MADISON SQUARE GARDEN』が6月2日に公開された。また、6月30日にはアジアを代表する2つのグループが1つになった最強ユニット2PM+2AM‘Oneday’を追ったドキュメンタリー『Beyond the ONEDAY 〜Story of 2PM & 2AM〜』が公開と、相変わらずの盛り上がりを見せるK-POP。では現在、韓国映画自体はどうなのだろうか。

ハリウッドチャンネル (写真上)『サニー 永遠の仲間たち』、(写真下)『トガニ 幼き瞳の告発』(C)2011 CJ E&M Corporation. All Rights Reserved

 2000年代前半には『シュリ』や『JSA』『私の頭の中の消しゴム』『四月の雪』といったヒット作が誕生したが、最近はイマイチな感が否めない。とはいえ、5月に公開された感動作『サニー 永遠の仲間たち』は映画ファンを中心にじわじわと口コミが広がっていて、今後は泣けるコメディ『ハロー!? ゴースト』(6月9日公開)、ラブストーリー『ただ君だけ』(6月30日公開)、衝撃的な事件を題材にした『トガニ 幼き瞳の告発』(8月4日公開)、法廷ミステリー『依頼人』(7月公開予定)、歴史アクション『神弓 -KAMIYUMI-』(8月25日公開)など、さまざまなジャンルの作品が待機しているのだ。

 おやっ? イマイチどころか、かなりの盛況ぶりである。なぜこのように思ってしまったのか――業界関係者は指摘する。

「ドラマの影響で新しいスターは出てきていますが、かつてのようなブームを作るまでには至っていません。ですが、映画の内容的には、以前のスターに頼った映画ではなく、『チェイサー』や『息もできない』といった骨太の素晴らしい作品が多く、演出で見せる映画が増えてきています。しかし、いくら内容は秀逸なものでも、スター不在による知名度不足、スポットライトが当たりづらいという点は否定できません。よって、そういうマイナスなイメージを与えているのだと思います」

 さらに、こういう意見も。

「ほかの作品に比べると、韓国映画のファンは熱い方が多いんです。もちろん、出演者に固定ファンがついていることも多い。そうなると、宣伝的な基盤は作りやすい一方、韓国映画=韓流といったイメージがあるため、若い世代まで広げるのが難しいといえます」

 固定ファンがいるゆえに、興収の予測はたてやすく、堅実にやっていけるものの、そこに胡座をかいていては、ファン層が広がらない。だが、もしファン層が広がったところで、広がってブームになったがゆえに固定ファンが離れていったら本末転倒の結果を生んでしまう。難しいところである。だが、関係者はこう口にする。

「韓国映画はほかの国の映画と違い、暴力表現や内容などがハードです。そういった強い表現をしている点が面白く、魅力的であるため、コアファンの観客層を中心と考え、あとは硬派な内容の作品を選んで公開していけば、ヒットに繋がると思います。なので、よりセグメントされていくのではないでしょうか」

 熱烈ファンのための作品と、ほかでは見られない硬派な作品。ある意味、真逆ともいえるその2つを持つ韓国映画、これは強い。

映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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