映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。
10年ぶりの新作となる『メン・イン・ブラック3(以下MIB3)』が、5月25日から公開となった。「えっ、10年ぶり?」と驚かれる人も多いだろう。その大きな要因の1つが、同シリーズでエージェントKを演じているトミー・リー・ジョーンズの存在だ。
というのも、彼は2006年からサントリーの缶コーヒー「BOSSレインボーマウンテン」のCMに宇宙人ジョーンズとして出演し、『MIB』シリーズでは宇宙人を取り締まる側とはいえ、宇宙人とトミー・リー・ジョーンズは切っても切り離せないくらい、われわれの間で馴染み深くなっているから。
同作の宣伝担当も、「一般の認知度という意味では、CMに起用されている、よく顔を見かけるということは、作品にとってかなりのプラスになると思います。例えば、『MIB』シリーズを知らない人でも、“BOSSのCMに出てくるおじさんが出演している映画”というふうに認識し、興味を持ってもらえます」と話す。
確かに、10年ぶりのシリーズ最新作と銘打たれた作品、ファンは間違いなく観るとしても、前作を知らなければ、“観たい度”はぐんと下がるだろう。それが、CMでの認知度があるからこそ、シリーズ未見層の観たい度もアップ。マイナスな点は少ない。
かつては、「アリナミンV」で魔人Vにふんしたアーノルド・シュワルツェネッガー、パチンコのCMでパチンコ玉の宇宙人に囲まれるニコラス・ケイジなどコメディ路線のCMがあった。「カロリーメイト」CMのキーファー・サザーランドは、そのまま『24』のジャック・バウアーだったし、レオナルド・ディカプリオはトヨタの「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」など、CM商品とイメージ的にピッタリなハリウッドスターが、さまざまな日本のCMに出演していた。
そして最近になって、ブルース・ウィリスはダイハツ「ミラ イース」CMで『ダイハード』シリーズを彷彿とさせ、リチャード・ギアは炭酸飲料「オランジーナ」CMで『男はつらいよ』の寅さん役を演じ、オーランド・ブルームの妻でありトップモデルのミランダ・カーは「リプトンリモーネ」で日本語の歌を披露している。
なぜこうも、ハリウッドスターの起用が増えてきたのか。関係者は話してくれた。
「全世界を視野に入れたマーケティングの商品が増えてきていることが要因の1つですが、役者稼業もそこまで景気のいい話ばかりではないため、日本のCMに出演してお金を稼ごうという意図もあると思います。考えてもみれば、相当数のスケジュールを拘束される映画よりも、拘束期間も短くて、それなりのお金が手に入る日本のCMは、ハリウッドスターのよいお小遣い稼ぎといえます。また日本企業側にとっても、流行に左右されやすい日本のタレントは、瞬間最大的な露出としてはよくても、すぐに過去のものとして見られてしまう可能性がある。ですが、ハリウッドスターの場合はその反対。息の長い商品やブランドイメージが強いものに適し、インパクトも大です」。
ハリウッドスターにも、ついに不況の波が到来か?
1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。
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