いつもとはひと味違う、2012年GW映画から見えてきた映画業界の現状映画ウラ事情

» 2012年05月02日 08時00分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


ハリウッドチャンネル 「HOME 愛しの座敷わらし」(写真上)と「裏切りのサーカス」(写真下)

 2012年のGW近辺の映画は、いつもと少し様子が違う。4月28日公開の『HOME 愛しの座敷わらし』の水谷豊、『わが母の記』の役所広司、『テルマエ・ロマエ』の阿部寛を筆頭に、『裏切りのサーカス』(4月21日公開)のゲイリー・オールドマン、『幸せの教室』(5月11日公開)のトム・ハンクス、それ以降もジョージ・クルーニー主演『ファミリー・ツリー』(5月18日公開)、ジョニー・デップ主演『ダーク・シャドウ』(5月19日公開)と、おじさんが頑張っているのだ。

 また、19日公開の『ザ・マペッツ』では、1980年代に一世を風靡した「マペット・ショー」のカーミットやミス・ピギー、ゴンゾなどが出演と、同作は幅広い層が楽しめる作品ではあるものの、懐かしく感じるのはやはり中年層に違いない。

 なぜここまで、“おじさん”や“懐かしさ”がフックに? この現状を関係者はこう話す。

「現在、映画業界のメインターゲットは年輩層になっています。数年前であれば、人気小説やコミック、ケータイ小説の映画化、テレビドラマの劇場版と、若者ターゲットの作品は確実にヒットしていました。ですが、そういった法則は成り立たなくなり、“懐かしい”をキーワードに、年輩層向けの作品がヒットを記録している。結果、観客と同世代のおじさん俳優が頑張る映画が多くなってきたのだと思います」

 確かに、昭和を題材にした作品や年輩層ターゲットの作品は、目に見えて多くなっているし、ヒットもしている。だが、GWは大人だけでなく、子どもにとっても休日。なぜ大人向けの作品が?

「小さいお子さんがいらっしゃる家庭は、『名探偵コナン』や『クレヨンしんちゃん』、『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』など、そこをターゲットにした作品が公開されており、その層より小さい子がいる家庭は、そもそも映画館に行けないと思います。逆に大きければ、ショッピングやテーマパークなどへ友達と遊びに行くでしょう。そうなると、残ってくるのは大人。それゆえ、大人向けの作品が良いわけです」(前述関係者)

 さらに、こうも続ける。

「正直なところ、家族全員で劇場に行くとなると、入場料以外にも、飲食代、プログラム代、グッズ代など、お金がかかりますよね。3Dとなると尚更です。映画は手軽なレジャーですが、そこまでのお金を払ってまで見たい作品があるかというと……。ソフト化されるのも早いですから、微妙でしょうね。結局、いつでも1000円の60歳以上が多くなる」

 おじさんの頑張りから見えてきた映画業界の現状。だが、年輩層がずっといてくれるわけではない。後々を担う“映画好き”を育てるため、すぐにでも何かしらのアクションを起こす必要がありそうだ。

(C)2012「HOME 愛しの座敷わらし」製作委員会

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映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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