旅客機は地上に降りて翼を休めていては、お金を生み出すことができない。乗客を乗せて飛ばないことには、利益を上げられないのだ。空港に留まっている時間が長ければ長いほど、無駄な経費はかさむだけ。それならば、なるべく稼働率を上げて収入を増やそうというのがLCCの発想で、事実そうすることで安い運賃を実現してきた。
イージージェットでのフライトで体験したのと同じことを、私はマレーシアのクアラルンプールから利用したエアアジアでも目の当たりにした。
とにかく、空港にいる時間が大手と比べて極端に短い。客室乗務員たちは1〜2時間のフライト中、有料サービスである飲み物や軽食を販売しながら、ポリ袋を持って乗客からゴミを回収する。トイレ掃除などもフライト中に済ませてしまうことで、空港での滞在時間を20〜30分程度に短縮させることに成功した。主力路線であるクアラルンプールからタイ・バンコクへのフライトでは、それまでどのエアラインも1機で1日に3往復が限界だったのを、エアアジアでは5往復にまで増やしている。
エアアジアは、クルーたちのチームワークによって機材の稼働率を高めることで、日本円で片道3000円という驚異の激安運賃を実現した。前に米国内での移動でサウスウエスト航空を利用したときには、時間を計ってみたら、到着してから出発準備を整えて再び離陸するまでわずか15分だったのを覚えている。
“ターンアラウンド”の時間を短縮化するため、サウスウエスト航空のスタッフは乗客を搭乗開始の10分前からゲートに並ばせ、通常のボーディングは前方のドアだけで行うのを後ろのドアにもタラップを接続。つまり乗客の乗り降りをさっさと済ませることで、無駄な時間を省いていた。
このサウスウエスト航空こそ、今日のLCCのビジネスモデルを最初につくった“元祖”ともいうべき存在である。空港での滞在時間を短くするためにクルーたちが機内清掃を手伝うというのも、もともとサウスウエスト航空が始めたこと。いまではどのLCCでも、クルーがポリ袋を持って動き回るのはめずらしい光景ではなくなった。サウスウエスト航空を初めて利用したとき、キャビンクルーどころか機長までが荷物運びに駆り出されていたのには、さすがに驚いたが。
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