建築物の耐震構造を応用――振動に強いG-SHOCK「GW-4000」の秘密開発者インタビュー(2/2 ページ)

» 2012年02月22日 09時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
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免震構造を応用し、振動を吸収する仕組みを設計

 建築物の耐震構造は大きく(1)免震構造(2)制震構造の2つに分けられるが、GW-4000の耐振動性能を実現するにあたり、免震構造を応用しよう、という方針はすぐに決まったという。「時計の文字盤や針の部分は固いものなので、細かく強く振動します。このモジュール部分を柔らかいもので囲み、揺れを吸収してやればいい。これが基本的な考え方です。GW-4000では、αGEL(アルファゲル)で作った円柱を立てて盤の回りに並べ、モジュールの振動を吸収しており、XYZ3軸の揺れに対して有効です。振動を吸収するには、円はとてもいい形状なんですね。免震住宅でも、建築物の下には円柱が入っていて、揺れを吸収するようになっています」(川岡さん)

GW-4000を分解したもの。モジュール部分(左から2つ目)を、アルファゲルを用いたパーツ(一番右と、右から2つ目)で包むことによって、振動を吸収する

 もう1つのポイントが、並べた円柱の表面にある突起(ダボ)だ。よく見ると、大きな突起が1つの円柱と、小さな突起が4つ並んだ円柱とが混じっている。「ダボに大小があるのは、大きな揺れにも小さな揺れにも対応するためです。大きなダボが大きな揺れに対応します。例えばりゅうずやボタンの横にある円柱は大きなダボです。ボタンを指で押し込んだときには大きな力がかかるので、大きなダボを付けた円柱を置いて大きな力に対応しているんです」(川岡さん)

GW-4000の構造を図解したもの(提供:カシオ計算機。拡大すると資料全体を表示)

 記者も実際に触らせてもらったが、ゲルという言葉から想像するよりは固い素材という印象だ。「中の組成を替えながら、10種類くらいの固さのゲルを作ってもらってテストをしました。共振するところに対し、うまく逃がせるように調整するのです」(川岡さん)

 モジュールの下にも同じ素材(アルファゲル)が使われている。盤の下に敷かれたアルファゲルは盤の裏にぴったりとくっついて振動を吸収する。

モジュールの回りを囲むパーツは突起を付けた小さな円柱が並んだ形(左)。アルファゲルはタイカが開発した衝撃吸収・振動吸収素材。シリコンを主原料とする柔らかい素材だ。写真はモジュールの裏に貼り付けるパーツ(右)

工事現場でも使えるG-SHOCK

SKY COCKPITシリーズでは視認性の良さも重視されている。時字(ときじ)の部分を立体化することでどの角度からでも見やすくなっているほか、蓄光塗料を塗って夜間でも見やすいように工夫。また時字をモジュールの一番外側に配置し、見切りに切りかきを入れることにより、同じサイズでも盤面が大きく見えるようになった

 SKY COCKPITシリーズのGW-4000だが、「工事現場で働く人とか、バイク乗りとか、いろんな人に使ってもらって、耐振動性能を実感してみてほしい」と斉藤さんは話す。

 「これはG-SHOCKではなくて『EDIFICE』なんですが、F1レッドブルレーシングチーム(参照記事)のエンジニアに使ってもらっていたことがあるんです。F1でタイヤ交換するシーンを思い浮かべていただきたいんですが、あれ、すごい振動が腕にかかりますよね。エンジニアが腕に付けていたEDIFICEの針が抜けてしまったということがあったんですが、GW-4000なら大丈夫。SKY COCKPITシリーズとして出していますが、こういう過酷な現場で働く人、工事現場の人とか、バイク乗りの人とか、これまでは振動がひどくて針の時計は無理だと思っていたような人にぜひ、GW-4000を試していただきたいですね」(斉藤さん)

 →今度は振動にも耐える、トリプルGレジストのG-SHOCK「GW-4000」

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