2011年の映画業界を振り返る。「映画に何ができるのかを考えた1年」映画ウラ事情

» 2012年01月11日 10時00分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


 今回は、2011年の映画業界を振り返ってみたい。

ハリウッドチャンネル 「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」(C)AFLO(写真上)/「100,000年後の安全」(写真下)

 まず、意外に思うかもしれないが、2011年は“スティーヴン・スピルバーグ”イヤーだったのだ。なんと彼が関わった作品は、現在公開中の監督作「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」を筆頭に、「カウボーイ&エイリアン」「SUPER8/スーパーエイト」「トゥルー・グリット」「リアル・スティール」など、全部で8本。そこにテレビシリーズを加えると合計13本と、なんて働き者! 日本一忙しいといわれている三池崇史監督もビックリの数字だろう。

 また、2011年は洋画の年でもあった。「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」(96.1億円)を始めとして、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」の88.5億円、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」の67.6億円、「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」の42.2億円と、人気シリーズの最新作がヒットを記録した一方、日本映画は「コクリコ坂から」の43.9億円が最高と、大きく差が開いた結果となった。

 そして、忘れてはならないのが、東日本大震災による影響だろう。4月1日公開予定だった「世界侵略:ロサンゼルス決戦」が9月17日公開、4月22日公開予定だった「サンクタム」は9月16日公開と、さまざまな作品が公開延期となり、「ヒア アフター」「かぞくはじめました」など、上映・公開中止となる作品も。

 少し状況が落ち着いてくると、今度は「100,000年後の安全」「アンダー・コントロール」といった放射能を題材にした映画が多く見られるようになった。ほかにも、撮影中に震災に遭い、撮影の延期やロケ地を変更しただけでなく、園子温監督最新作「ヒミズ」(1月14日公開)のように設定を変更した作品も出てきた。

 ざっとまとめると、このような2011年だったのだが、映画関係者にはどのような1年だったのだろうか。

「未曽有の震災の影響は、やはり大きかったですね。直後の上映中止、内容修正など相当敏感でしたし、そもそも、“こんなときに映画なんて見れるか!”という感じでした。それを証明するかのように、年間トータル興行収入は2010年よりも400億下回る結果になるというデータも。ただ、劇場離れが深刻になっているなかで、『ハリー・ポッター』や『パイレーツ』といった作品が、100億近い数字を上げ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』もヒットしている。洋画の明るいニュースがあって、本当に良かったと思います」

 ほかには、こんなコメントも。

「震災があり、映画に何ができるのかを考えた1年でした。自分が撮ったわけではないのですが、公開するのか、しないのか、公開するとしたら、なぜ公開するのかなど、公開することが当たり前だった映画を、根本からいろいろとみつめられました」

 数字的には洋高邦低が顕著となったが、いつもは数字や作品の傾向について話してくれる関係者のほとんどが震災のことを口にするほど、やはり震災の影響が大きかった2011年の映画業界といえるだろう。

映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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