第56鉄 東陽町発亀戸行き、都電の廃線跡を歩く杉山淳一の +R Style(4/5 ページ)

» 2012年01月10日 11時11分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 かつては都電が走っていたとはいえ、鉄道駅から遠い地域にこれだけの商店街があるとはちょっと不思議。でも私には思い当たることがある。「もしかしたら」と探してみると……やっぱりあった。銭湯だ。

 いまはマンションの奥になっているが、商店街の宝くじ売り場の横を曲がると銭湯があった。家庭風呂が普及するまでは、労働者が多い街には銭湯が欠かせなかった。そこで、人々が集まる銭湯の周りに商店が次々と開店したのだろう。砂町銀座には、かつて別の場所に砂町温泉もあったそうだ。

 実は、私の母方の祖父も20代で東京・大田区で銭湯を始めた。祖父の銭湯のお陰で町ができたと、祖父の葬儀で誰かが言っていた。東京には「門前町」ならぬ「銭湯町」があるのだ。地主さんが土地の借り手を呼び込むために、まずは銭湯を誘致したのであった。

 さて、丸八通りに出たらちょっと北へ。肉好き仲間に教えてもらったレバー丼屋「ぱやよし」を探し当てた。新鮮なレバーを目の前の鉄板で焼き、甘辛のタレを絡めてご飯に載せる。この「純レバ丼」は350円。テイクアウト専門なので、砂町銀座を逆戻り。温かいうちに食べたいけれど、今は食べている場合ではない。急げ急げ。貨物線に戻るのだ。越中島支線の貨物列車は1日に3往復しかない。その貴重な列車が12時すぎに通過する。見なくちゃ!

砂町名物(?)の純レバ丼。濃い目の味付けで旨い

 かつて大量の貨物を扱っていた越中島支線には、現在レール運搬用の貨物列車が走っている。レールは港で陸揚げされ、JR東日本レールセンターで加工されて貨車に積み替えられ、各地のレール交換現場に運ばれる。旧小名木川駅あたりで純レバ丼をほおばりながら待っていると、赤いディーゼル機関車が数両の貨車を牽いてきた。海方向へ向かっているから、荷物を迎えに行くところだろうか。ジョギングのような速度でゆっくりと通り過ぎた。踏切の前で列車が一旦停止し、係員が安全を確認する。なるほど、運行本数が少ないから、廃線だと勘違いするドライバーがいるかもしれないな。

1日3往復の貨物列車を見物

再び緑道を歩いて亀戸へ

次の廃線跡、大島緑道公園の入り口

 越中島支線は鉄橋で小名木川を渡る。残念ながら歩道橋はないので、ここで線路とお別れだ。しかし明治通りに戻って100メートルほど歩けば、次の廃線跡の「大島緑道公園」に入れる。こちらも緑がたくさんあって、住宅街の裏通りにもかかわらず、森のような香り。沿道には図書館や中学、高校があり「文学の散歩道」といった趣だ。私の前を制服姿の男女が楽しそうに歩いている。青春だなあ。いいなあ。

 大島緑道公園と新大橋通りの交差点。この真下に都営新宿線が走っていて、100メートルほど西に西大島駅がある。ところで、どこからか揚げ物のいい香り……と思って振り返ったら、鶏のから揚げ専門店があった。九州の中津発祥、というわけでもないようだが、最近は都内でもから揚げ専門店が増えていると聞く。いい匂いがどうしても気になって店内へ。揚げたての醤油味、塩味、ニンニク味を100グラムずつ買って、食べながら緑道に戻った。揚げたてだから、まるごと口に放り込むわけにはいかない。肉汁が熱いから、フーフーしながらかじった。んー、旨い。

揚げたて熱々のから揚げを食べながら歩く

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