「ラグ」という言葉を知っているだろうか。ラグは、時計専門用語で腕時計本体とストラップもしくはブレスレットを固定する部位を指す。ホーンあるいはアタッチメントと呼ばれることもあり、ケースから突き出た形状から日本の時計屋さんでは「足」などとも呼ぶ。ケースのデザインに合わせて、ストレートラグ、フレアードラグ、環型のリングラグなど、さまざまなデザインがある。
ラグのデザイン、ラグとラグの間隔などの微妙な違いで、またラグ自体が時計にあるかないかで、腕時計はクラシカルになったり、カジュアルになったり、あるいはマッシブにも、フェミニンにも、まるで別の表情を見せてくれる。今回は、時計のデザインを語るうえで欠かせない「ラグ」にクローズアップ。
もっともオーソドックスなスタイルのラグは、ケース本体に溶接されている。正面からみるとラグがケースの曲線に沿うように緩やかにカーブしているのがよく分かる。ケース接合部からラグの先端までの長さ、先端に向かって下方にカーブする角度などが綿密に計算され、全体のバランスが非常によく整っている。細かなところでは、時計ベルトを装着した際にできる三角形の隙間(面積)と、時計全体のバランスも絶妙だ。
ラグ表面に段差をつけたラグは、ステップドラグと呼ばれる。わずかな段差を設けただけで、腕時計自体がグッとモダンな雰囲気になる。機械式時計が黄金期を迎えた1940〜1950年代にも、このステップドラグはよく見られた。写真の時計はベルトがラグの奥まで伸びてケースにぴったりと隙間なく取り付けられているので、オーソドックスなラグで言及したような三角形の隙間は見えない。
クエルボ・イ・ソブリノスの腕時計は、ラグ中央部を彫刻刀で削り取ったようなデコラティブなデザインが目を惹く。ラグ先端を丸め、その部分に見えている特殊形状のビスで時計ベルト固定する凝ったデザインだ。最新の腕時計だが、とても古めかしく見えるエイジンング加工が施されている。
一方、ユリス・ナルダンの腕時計は、通常両端でベルトを固定するラグとラグの間にフードを付け、ケースとラグが一体にみえるデザインを採用。ラバーベルトを組み合わせることで、よりスポーティでモダンな表情に見えてくる。
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