今回は昼間のフライトでちょっと見えづらいが、旅客機の主翼の先端には赤と緑のライトが光っている。左右の主翼についているそのライトは、どの旅客機も左翼側が「赤」で右翼側が「緑」。これらは「ナビゲーションライト」と呼ばれ、いずれもそれ以外の色であってはならない。なぜか?
理由は、夜間でも対向機の進行方向が分かるようにするためである。フライト中、コクピットから前方に他の旅客機のライトが見えたとしよう。右側が赤く、左側が緑色に光っていれば、その旅客機は自分たちの方向に向かって飛んでいることが分かる。肉眼ではなかなか状況判断がつきにくい夜間のフライトで、ナビゲーションライトはパイロットの判断を助ける重要なシグナルになるわけだ。
では、高速で飛行中の旅客機同士が上空ですれ違うときというのは、コクピットクルーの目にはどんなふうに映るのだろう──。
仮にお互いの機が時速900キロで近づいているとすれば、相対速度は時速1800キロ。その速さは、私たちがふだん乗り慣れている車や電車とはケタが違う。相対時速1800キロは、秒速に換算すると毎秒500メートル。最初は小さな点にしか見えず、前方5キロ前後まで近づいて、ようやくそれが対向機だと視認できるという。つまりパイロットが対向機の存在に気付いてから、上空ですれ違うまで──その時間はほんの10秒ほどでしかない。
もっとも、上空で対向機が視界に入ってきたからといって、それが衝突やニアミスにつながる心配はない。地上の管制塔などから旅客機同士は接近し過ぎないよう常にコントロールされているし、同じ航空路上を飛行する場合でも高度4万1000フィートまでは東に向かう旅客機は1000フィート単位の奇数高度、西行きは1000フィート単位の偶数高度で、4万1000フィート以上では倍の2000フィート間隔で飛ぶといったルールもできている。
ナビゲーションライトは、あくまでも「いざというときの判断を助けるためのもの」と考えていいだろう。
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