第55鉄 乗り物いっぱい富士山めぐり(後編)奇想天外なバスに乗る杉山淳一の +R Style(5/5 ページ)

» 2011年12月21日 06時37分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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富士山駅と下吉田駅、2つの水戸岡デザインを訪ねる

 山中湖から戻り、旅の締めくくりとして2つの駅をゆっくり訪ねた。1つ目は改名してリニューアルされた富士山駅。駅名票もトイレも和のテイストが生かされ、エントランスには大きな鳥居も掲げられている。それにしても、もとからあった大きな建物は何だろうと気になっていた。富士急行の本社ビルにしては、失礼ながら大きすぎるような……。それが今回、探訪して分かった。オフィスビルのような外観だけど、中身はデパートだった。1階はスーパーと土産物屋さん、2階以上は生活雑貨や洋服やさん、クリニックなどがテナントとして入店している。

富士山駅。入り口の大きな鳥居で記念撮影する人も
屋上のテラスも水戸岡鋭治デザインでリニューアル

 そのビルの最上階は展望テラスになっていた。富士山と富士吉田市を一望できるスポットだ。ここも富士山駅と同様に、水戸岡氏の手でリフォームされていた。富士急ハイランドも見える。富士急行の電車が走る姿も見える。富士山が見えたらなあ、夕陽も見えたらなあ……と、曇天が心から悔やまれた。

 気を取りなおして大月行きの電車に乗った。まだ帰らないぞ。昼前に富士登山電車で立ち寄った下吉田駅を再訪問。さっきは貨車しか見なかったので、今度は駅舎をゆっくり眺めた。遠くからその佇まいを、近くから造形の美しさを。そして待合室でペットボトルのお茶を飲みつつ、静謐な空間を楽しむ。いや、たしなむといったほうが似合うかもしれない。広くて、シンプルで、懐かしい。

 窓口も閉じて無人になった駅に、ひっそりと電球の柔らかい光が灯っている。私はふと、北海道の夕張にある洋館「鹿鳴館」を思い出した。そこには昭和天皇も滞在されたという貴賓室があって、誰でも見学できる。この待合室には、その貴賓室に通じる雰囲気がある。されどここは駅。列車を利用する人や、送迎に訪れる人が、誰でも、いつでも中に入れる。そう思うとこの空間は贅沢だなあ。朝はこの駅から通勤や通学に出かける人がいるんだろう。夕方はここから家路をたどる人もいるだろう。羨ましい。故郷の駅がこんな駅だったら、帰省も楽しくなるに違いない。

こちらは下吉田駅。レトロモダンって感じでオシャレ(左)。高い吹き抜けを活かした空間デザインで、中に入ると落ち着く(右)
のれんを使ってぬくもりを演出(左)。ガラス張りの待合室は富士山を眺めるためだ。屋根の下の電球とランプシェードがオシャレ、ぜひ見に行ってみて(右)

map 今回のルート。ここをクリックすると筆者による各ポイントについての説明が読める

今回の電車賃

JR東日本 新宿−大月 1280円

富士急行 フジサン特急フリーきっぷ 2200円 富士登山電車乗車整理券 200円

オープンバス KABA 1200円

以下、後編の交通費

富士山駅−旭日丘 富士急行バス 620円(後編)、水陸両用バス KABA 2000円 (後編)、旭日丘−富士山駅 富士急行バス 620円(後編)、JR東日本 大月−新宿 1280円(後編)

※東京からは、「河口湖・山中湖セレクトフリーきっぷ」(4500円)が便利。往復のJR運賃と富士急行フリーきっぷ、バスチケット(4種類から選択)のセット。(KABA 富士登山電車などは含まれない)


著者プロフィール:杉山淳一

book A列車で行こう9 公式ガイドブック(エンターブレイン)

 肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」

 日本工学院大学非常勤講師(テキスト商品学)。コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。

 趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう9 公式ガイドブック(エンターブレイン)』『A列車でいこうDSナビゲーションパック(アートディンク:同梱冊子担当)』など。


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