去る2011年9月5〜9日に静岡県袋井市の小笠山総合運動公園(通称エコパ)で開催された第9回全日本学生フォーミュラ大会、昨年に引き続き観戦に行ってきました。車とバイクをこよなく愛する中年オヤジが見た学生フォーミュラを前編・後編とレポートします。テクニカルな側面だけでなく、学生さんのマインドや私の偏屈(!?)な車への思いなどを交えて皆さんに「明るく楽しい」記事をお届けします。
観戦したのは9月7日(3日目)の木曜日、残暑厳しい快晴の日でした。エコパの大駐車場を埋め尽くすテント(ピット)群、日本全国、いや海外からも多くのチームが参戦していました。今回は、@IT MONOistの取材同行という形で、いくつかのチームのピットでインタビューをさせていただきました。
時間の都合上、私がインタビューできたのは残念ながら4校でしたが、本記事ではMONOistさんが取材してくれた内容のレビューを含んでいます。対話形式になっている部分が私が直接インタビューしたピットです。
編集担当小林:今回は「関さんのアシスタント」ということで少しだけコメントでお邪魔します。
レギュレーションにより排気量は610cc以下と定められています。パワーソースは主にモーターサイクル用の400〜600cc、4サイクルエンジン、単気筒で軽量なマシンを作るチーム、4気筒のパワフルなエンジンを使うチームとさまざまです。最軽量マシンはNo.7 名古屋工業大学(エンジン:ヤマハWR450F)とNo.64 ホンダテクニカルカレッジ関東(ホンダCRF450X)の160キロ。そして最重量はNo.71 福井工業大学(ホンダCBR600RR)、北海道自動車短期大学(ホンダSilver Wing600)の320キロとちょうど倍の開きがあります。
北海道自動車短期大学のチームリーダーは鶴巻朋美さん。今回が本戦初出場で、コンセプトは「初心」、決して軽量パワフルとはいえない大型スクーターの水冷2気筒エンジンとCVTをそのまま使い、車体強度を高め信頼性を確保したため「大会最重量マシン」であることは認識しているとのこと。そして短期大学であることから技術伝承どころか大会参戦の経験のバトンタッチさえままならないのが一番の課題と苦しい胸の内を明かしてくれました。
しかし、見事すべての競技をクリア。しかもCVTとスロットル操作テクニックが奏功し、エンデュランス走行での省エネルギー賞受賞です。総合成績も49位、初出場として堂々の成績ではないでしょうか。本当におめでとうございます。
編集担当小林より:カウルのデザインは、新幹線や飛行機など「世の中にある速そうな乗り物」をとにかく混ぜてみた感じだそうですが、その結果、このようなイルカっぽいデザインにまとまったとか。摩訶不思議。
参加車両のエンジンレイアウトはほとんどがフォーミュラらしくミッドシップです。その中で唯一異彩を放つFRレイアウトマシンのNo.60 青山学院大学、チームリーダーの細田英明さんにインタビューしました。
私(以下S) こ、これはFR!? なぜFRにしたの?
細田さん(以下H) 私たちは今年で2回目の参戦なのですが、「個性を出していこう」ということでFRにこだわりました。
S エンジンは……。ヤマハのWR450Fですね、ピストンがペッタンコのやつ。
H 4気筒エンジンを積むとフロントヘビーになるので、軽量な単気筒エンジンにしました。
S 後輪にはどうやって動力伝達してるの? まさかチェーンじゃないよね?
H そこが苦労したのですが、シャフトドライブです。
S 前後車重配分は?
H ぴったり50対50です。
S 理想的だねぇ♪ お、燃料噴射じゃなくってキャブ使っているんだ、それもFCR! ……あれ? エキゾーストパイプの出方、穴空きのヒートガード……これ、もしかして「ロータススーパー7」をモチーフにしてる?
H 分かっちゃいました?(笑) やはりFRレイアウトの象徴のような車ですからね。
S これは私のような車大好き中年オヤジには受けるな〜。エンジンやミッションは基本ノーマルだから大丈夫だろうけど、シャフトやリアデフ辺りの出来いかんだね。ギア比はどうやって決めてるの?
H シミュレーションソフトを使ってアクセラレーション75(0-75m発進加速性能)でパワーバンドに入るように設定しています。
S 車両製作で一番苦労したところは?
H やはり前例のないFRレイアウトなので試行錯誤の連続でした。レギュレーションに収めること、コンパクトかつ高剛性なフレームデザインにまとめるなど苦労しました。
S チューブラーフレームを皆で溶接かぁ! 素晴らしい〜! 頑張ってくださいね!
成績は静的・動的審査ともにあまり振るわず、総合で64位でしたが、ロータスがモチーフだけにブリティッシュレーシンググリーンに塗られたマシンはカーマニアを自称する中年オヤジの心を妙にくすぐるのでした。このFRレイアウトを継続し、パフォーマンス向上を目指してほしいと思います。
編集担当小林より:この学生フォーミュラ大会は、工学系の単科大学よりも総合大学の方が上位入賞が目立ちます。工学的な知識だけではなく、渉外(営業)活動やプレゼンテーションの能力も求められるからといわれます。青学も総合大学。同校の今後の活躍が期待できそうです。
さて、次は我が出身校、芝浦工業大学のピットを訪ねました。チームリーダーの西山宙さん(以下N)との会話です。
S おお、我が母校頑張ってるなぁ!(遠い過去の先輩なのに上から目線で偉そうに話す私。笑) エンジンは何を使っているの?
N ホンダCBR600RRです。LSD(リミテッドスリップデフ)はホンダ ビート用を使っています。
S え? ビート用? 自分も1992年型のビートを愛用していて、LSDしっかり入れてるよ。何だか親近感湧くなぁ。で、ドライブシャフトが真っすぐじゃなくて、斜めになっているのには意味があるの?
N 実はシャフトの長さを間違えまして……、LSDを後ろにセットして調整したんです。
S シャフト作り替えればいいじゃん。
N いやぁ、カーボンのワンオフのシャフトなのでとても作り直す予算がないんです……。
S そっかぁ、それは残念だね。でも失敗は必ず糧(かて)になるよね。健闘を祈ります!
N ありがとうございます!(先輩!※)
芝浦工業大学「SHIBA-4」Webサイトに結果報告が掲載されていました。動的審査では燃費を除きすべて20位以内に入り、総合13位と大健闘、そして日本自動車工業会 会長賞(完走奨励賞)受賞です。
来年2012年はゼッケンがNo.13とずいぶん軽くなりますね、おめでとうございます!
編集担当小林より:関さんの母校でもあり、大会常連校の芝浦工大ですが、いろいろと紆余曲折しつつ、現在に至っているのです。これまでに、部の存続の危機もありました。危機を乗り越えようとあがいた芝浦工大の秘話をぜひご覧ください。黄色のカウルに込めた思いとは……。
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