第54鉄 乗り物いっぱい富士山めぐり(前編) 富士登山電車とオープンバス杉山淳一の+R Style(2/4 ページ)

» 2011年10月08日 12時30分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

電車の魅力いっぱい「富士急行」で行こう!

 トーマスランドの富士急ハイランドは、東京都心からだとクルマやバスで約1時間半……いやちょっと待った。鉄道好きならここはやっぱり電車で行こう。

 富士急ハイランドには富士急行の駅が隣接している。中央道と首都高速4号線は休日下りに渋滞しがち。電車で行けば渋滞知らず……いやいや、渋滞を避けるという消去法ではなく、富士急行そのものが面白い。展望車付きの「フジサン特急」やトーマスいっぱいの「トーマスランド号」、大人向けの「富士登山電車」もある。これらも遊園地のアトラクションに負けない魅力だ。

 週末に都内から出発するなら、新宿と大宮から『ホリデー快速河口湖号』が運行されている。特急用の車両を使っているけれど、快速だから乗車券のみで利用できる。乗り換えなしで富士急行線内に到着できて便利。……なのだが、これに乗ってしまうとせっかく富士急行が走らせているユニークな列車に乗れない。そこで今回は中央線豊田駅始発の普通列車、甲府行きに乗った。大月駅までは約1時間だ。高尾を過ぎると起伏に富んだ里山の風景が続く。各駅停車でのんびり楽しもう。

豊田発大月行きの普通列車。高尾発より空いていてオススメ
中央本線も高尾を過ぎればこんな景色に
大月駅に到着。富士急行の留置線にフジサン特急がいた

東京から最も近い“水戸岡デザイン”『富士登山電車』に乗ろう

 富士急行のユニーク列車は3種類。2002年から運行を開始した「フジサン特急」、2007年から運行されている「トーマスランド号」、2009年から走り始めた「富士登山電車」だ。今回はまず、富士登山電車に乗ってみた。この電車は木曜日と点検日(不定期)以外の毎日運行している。定員制で、乗車券のほかに200円の着席券が必要だから、観光シーズンは予約したほうがいいだろう。

 外観はレトロなダークブラウン。細い帯と富士山をあしらった上品なマークがオシャレだ。室内はさらに上品な雰囲気だ。クロスシートの他にソファやベンチシートが用意され、内装はニス塗りの木の質感でまとめられている。リゾートホテルのロビーや洋画に出てくる邸宅のリビングのようで、着席するとホッとする。これが元は京王電鉄の通勤電車、5000系だったなんて信じられないくらいだ。正面の顔つきにその名残がかろうじて残るくらいで、まったく別の電車に変わっている。

 キャラクター色の強い『フジサン特急』や『トーマスランド号』に比べると、『富士登山電車』は大人の雰囲気になっている。このデザインを手がけたのは、JR九州の車両デザインで有名なデザイナー、水戸岡鋭治氏だ。大分行き特急『ソニック』や787系では奇抜で未来的な列車を提案し、九州新幹線『つばめ』では和の絢爛さを表現したかと思えば、和歌山電鐵ではかわいい『たま電車』を作った。

 その水戸岡氏が、世界遺産登録を目指す富士山へのアクセス列車を仕立てた。それがこの『富士登山電車』というわけだ。東京から最も近い水戸岡デザイン車両である。旅好きや鉄道ファンだけではなく、インテリアやデザインに興味がある人も注目の電車である。

今日は『富士登山電車』で出発!
大人向けのインテリア。座席は富士山向き
運転席後方にステップがあるのは、「子どもが景色を楽しめるように」という配慮

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