第52鉄 都営交通100年記念〜都電の保存車めぐりと記念展杉山淳一の+R Style(3/5 ページ)

» 2011年08月29日 22時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

ひと駅ぶん歩いて荒川遊園「下町都電ミニ資料館」

 「荒川車庫前」から隣の「荒川遊園地前」までは、ぜひ歩きながら都電の走りを眺めてほしい。都電荒川線の荒川区内区間では、沿線の人々がバラを植えている。様々な品種があって、5月頃から秋くらいまでが見頃という。ちょうど今はこの区間で満開だ。バラと都電の組み合わせを見れば、地域の人々に愛されている電車だなあ、とうれしくなる。

荒川区内の区間は、沿線の人が植えたバラで彩られている

 あらかわ遊園には都電6000形が保存されている。メインゲート横にあって、入場しなくても姿を見られる。これは都電ファンにはよく知られている。6000形は戦後に製造された都電の主力車両で、約300両が活躍。同じ車体は別の形式でも採用されて、都電は約600両がこの形になったという。このデザインは日本の路面電車の標準として、全国の路面電車で採用されたとか。

 このあらかわ遊園は、園内にも鉄道ファンの名所がある。6000形の奥、スワンの池の向こう側にある「ふれあいハウス」の1階に「下町都電ミニ資料館」ができたのだ。その名の通り規模はミニだけれど、Nゲージの鉄道模型ジオラマは子どもたちに人気。中央の都電の模型はなんとダンボール紙製で、こちらは工作好きの大人にも興味深い。ショーケースには都電関連の部品も展示されている。

 ちなみにNゲージ鉄道模型は、かつて尾久にあった鉄道模型運転場「のぞみ会」(参照リンク)のレイアウトを移転したという。のぞみ会は尾久の大工さんが主催していた鉄道模型クラブで、空き工場を借りて運営していた。開放日には全国から鉄道模型ファンが訪れたという。個人施設としては全国有数の規模だった。しかし昨年、工場の取り壊しによって惜しまれつつも閉鎖されてしまった。当時の規模は今の6倍もあったというから、見ておきたかったな……。

6000形はヘッドライトがひとつで「一球さん」と呼ばれた。この塗装は当時の電車やバスで流行した「金太郎塗り」。由来は金太郎の前掛けに似ているから(左)。あらかわ遊園ふれあいハウス。1階が「下町都電ミニ資料館」(右)
のぞみ会の寄贈による都電模型。なんとダンボール製(左)。Nゲージ鉄道模型の運転を楽しめる(右)

 都電荒川線で戻って王子駅でJRに乗り換え……だけど、この近くの飛鳥山公園にも都電の保存車があった。ここは本連載の第10鉄でも紹介したところ。あの時は工事中だった嘉穂モノレールは、アスカルゴという名前をもらって元気に運転中だ。しかも無料。王子駅から飛鳥山公園は急な階段か坂道を登らなくてはならずツラかったけど、アスカルゴのおかげで便利になった。

休日の日中ながら運行本数は多い
飛鳥山公園の「アスカルゴ」が稼働中
アスカルゴと8800形。色と形がなんとなく似ている
飛鳥山公園の「一球さん」

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