第52鉄 都営交通100年記念〜都電の保存車めぐりと記念展杉山淳一の+R Style(1/5 ページ)

» 2011年08月29日 22時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 1911(明治44)年、東京市は市内で路面電車を運営していた東京鉄道を買収した。同年8月1日、路面電車を運営するために東京市電気局が発足。これが現在の東京都交通局の起源だ。両国の江戸東京博物館で「東京の交通100年博〜都電・バス・地下鉄の“いま・むかし”〜」を開催中とのことで、ちょっと寄り道しながら訪ねた。

map 今回のルート。ここをクリックすると筆者による各ポイントについての説明が読める

都電おもいで広場で思い出を探す

 朝から新宿で用事があって、昼過ぎに終わった。ここから両国の江戸東京博物館へ行くなら、総武線の黄色い電車で直通できる。でもせっかく都電の歴史を眺めに行くなら、都電荒川線に立ち寄ってみよう。

 山手線で大塚駅へ。この駅の真下を都電荒川線が走っている。ちょうど最新型の8800形がやってきた。これは2009年に登場した電車で、当時は2台しかなく、なかなか出会えなかった。その後2010年末までに10両が揃い、現在はよく見かける車両になった。もう主役顔だ。客室は音が静かで冷房が効いている。運転台の窓が大きく、眺望も良い。

いまやすっかりなじんだ8800形

 都電荒川線は下町の人気者。休日の昼間ということもあって、お出かけの人々で混んでいる。最後部に移動して後ろを眺めていたら、次の電車の姿が見える。都電荒川線は早稲田から三ノ輪橋まで約12kmの路線で、そのうち、大塚駅前と町屋駅前は区間運転の電車がある。だからこのあたりは運行本数が多く、日中でも3分間隔になる時も。車内放送で次の電停を案内するときに宣伝が入り「ひつまぶしの○○はこちらでお降りください」などと魅力的なことをいう。ああ、しまった。新宿でお昼ごはんを食べてきちゃったよ……。

荒川車庫に隣接した「都電おもいで広場」
米国仕込みの5500形。この1号車は部品のライセンス製造が難航し、実は国産の2号車が先に運行を開始したという
5500形の車内に作られたジオラマ。3丁目の夕日の世界?

 路面区間で飛鳥山公園のアスカルゴ(後述)を眺め、あとで寄ろうと思いつつ、先に荒川車庫電停へ。都電荒川車庫は年に何回か公開されているけれど、非公開の日も隣の「都電おもいで広場」に立ち寄れる。 保存車両は5500形と7500形。5500形はアメリカの技術ライセンスを購入して作られた電車で、流線型の車体が台車をすっぽり覆っている。当時の人なら「バタ臭い電車」と評しただろうか。室内には当時の部品や昭和30年代を再現したジオラマがある。電車は走っていなかったが、遠くに路面電車の線路が見えた。

 路面電車の線路は、鉄道ファン的には「併用軌道」という。道路と線路の併用、という意味だ。日本の法律では「鉄道法」と「軌道法」の2つがあって、普通の鉄道と路面電車は扱いが違う。これはまた別の機会に。

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