2012年宇宙の旅。ヴァージンギャラクティックが主催する夢の宇宙旅行秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/3 ページ)

» 2011年07月29日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

観光宇宙船スペースシップ2

 民間人向けの宇宙旅行を主催するのは、リチャード・ブランソン率いるヴァージングループ傘下のヴァージンギャラクティックである。その全容を紹介する前に、まずは2009年12月に完成した観光宇宙船について解説しておこう。

 この観光宇宙船は「スペースシップ2」と命名された。私企業が開発した宇宙船として2004年に初めて大気圏を突破したスペースシップ1を進化させたものである。長さ18.29メートル、幅12.8メートル、高さ4.57メートルのサイズで、大きさとしてはビジネスジェット旅客機と同程度。パイロット2名が乗務し、直径2.28メートル、長さ3.66メートルのキャビンに6名の乗客を乗せることができる。

飛行機と空と旅 スペースシップは双同型のマザーシップで高度16キロ付近まで運ばれる(画像をクリックすると拡大します)

 スペースシップ2は、マザーシップ(母船)によって地上から成層圏まで運ばれる。マザーシップはスペースシップの胴体を2つ並べたような双同型で、それを幅42.7メートルの細長い主翼で結合。主翼には4基のPW308ターボファン・ジェットエンジンを装備した。スペースシップ2がマザーシップから切り離されるのは高度16キロ付近の地点だ。その後は胴体後部にあるハイブリッド・ロケットエンジンに点火し、目指す宇宙空間まで自力で上昇していく。

水平&垂直尾翼を持つ“デルタ翼”

 さて、スペースシップ2の形状をもう少し詳しく見ていこう。その一番の特徴は、先端に水平&垂直尾翼を持つ「デルタ型」の主翼だ。無重力空間から大気圏に再突入する際には、尾翼を含めたテール部分が上に折れ曲がるようにできている。

 これは「フェザリング」と呼ばれる技術で、原理としてはバドミントンの羽根の仕組みに近いかもしれない。スペースシップ2が動力飛行するのは上昇段階だけで、帰りはグライダーのように滑空して地球に帰還する。大気圏への再突入時にテール部の翼が65度の角度で回転・変形することで、機体はパイロットの制御なしに自然落下に適した安定した状態をキープ。2011年5月には米カリフォルニア州で、このフェザリング技術を実証するテスト飛行も実施された。

 テスト飛行では、高度約1万5700メートルでスペースシップ2がマザーシップから切り離された。テール部の可動翼が始動する。胴体から65度の高さに立ち上がり、その後は時速280キロのスピードで垂直に降下。高度約1万800メートルで尾翼は通常の形に戻され、優雅に滑空して地上の滑走路に舞い降りた。

飛行機と空と旅 2011年5月には米カリフォルニアでフェザリング技術を実証するテスト飛行にも成功

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