第51鉄 キハ52と保存車両とホタルトレイン――房総横断ローカル線紀行(後編)杉山淳一の+R Style(1/6 ページ)

» 2011年07月12日 11時34分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 東京から日帰りできる房総半島横断ローカル線の旅、後編はいすみ鉄道を遊びつくす。昭和の名優キハに乗車して横断完了。でも、とんぼ返りして大多喜城を見物。保存車両を見物しに行き、ホタル観賞で締めくくった。

 →小湊鐵道と養老渓谷とわらじトンカツ――房総横断ローカル線紀行(前編)

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いすみ鉄道名物「キハ52」

 デンタルサポート大多喜駅に鉄道ファンや家族連れが集まっている。お目当ては13:45発の急行3号、旧国鉄のキハ52形ディーゼルカーだ。1960年代から全国の国鉄ローカル線で活躍し、老朽化で次々と廃車された。2010年の夏までJR西日本の大糸線で使われ、稀少価値と懐かしさから全国の鉄道ファンの人気を集めていた。そのキハ52をいすみ鉄道が譲受した。鉄道自体に「名物」がない同社にとって、活性化の切り札というわけだ。

いすみ鉄道で活躍しているキハ52形。JR西日本時代はブルーとクリーム色の「スカ色塗装」だったけれど、整備に当たって旧国鉄の一般型塗装にお色直しした
ムーミン列車とキハ52、新旧ディーゼルカーの競演。デンタルサポート大多喜駅にて

 しかし鉄道ファン以外の人にとって、キハ52形は“古臭いディーゼルカー”だ。SLほど一般の人に分かりやすい車両ではない。しかも、いすみ鉄道は1988年製のディーゼルカーを廃止して、それより20年以上も古い1965年製の車両を導入したわけで、妙なことをする会社だと思った人も多かったに違いない。ところがいすみ鉄道の目論見は当たった。キハ52は鉄道ファンだけでなく、昭和時代のノスタルジーを感じさせるシンボルとして、観光客を引き寄せている。ホームに入ると、カメラを片手に忙しく動きまわる鉄道ファンと、お酒やおつまみを抱えて談笑する年配のグループがいた。

キハ52の車内。JR西日本時代の現況を保存している。クロスシートの約半分は指定席
なかなか気づかないけれど、車内中吊り広告も高度成長期の雰囲気を残している。ソニーのテレビは今とまったく形が違うし、週刊現代は40円だ
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